唯一無二の貴方。2【キングダム】

仮面の下の素顔。2 ページ25

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「奴と何を話していた？」

「何故そんな事を聞くんですか？」

「質問に答えろ」

「特に何も…。強いて言うなら戦場にいる王翦様の身を毎日案じておりました」


私の言葉に甲冑を脱いでいた王翦様の手が止まり、「側に来い」と私を呼んだ。言われた通りに近づけば、私の腰を抱き寄せ強く抱きしめてくる。

久しぶりの温もりに酔いしれてしまいそう。

王翦様の仮面の下の素顔を知るものは少ない。
整った容姿はどことなく賁様に似ている気がする。


「私と同じか…。」

「同じ…ですか？」

「お前の身を案じていたということだ」

「私は戦場に出ている訳ではないので、命を脅かされることもありません。何かあれば王翦様の配下の方々も守ってくれますし、それに賁様だって、」


いつもは顔色一つ変えない王翦様も、賁様の名を口に出した途端に不機嫌になり、私の体を抱き抱えると手荒く寝台へと押し倒した。


「容易に男の名を口にするな。それがお前の身の為でもある」

「私の為とは…？」

「お前は世間を知らぬ。男を知らぬ。近づいてくる男が皆何の代価もなく優しくすると思うな。常に危機感を持って行動しろ。人の欲は深い、欲しいものを手にいれる為なら力ずくでも手にいれる。力のないお前では、自分の身を自分で守れはしないだろう」

「その時は王翦様が守ってくれるんですよね？」

「お前と言う奴は……。」


呆れつつも私の額に下りてきた唇。次に下りてくるであろう場所を思い目を閉じれば、思った通りの場所に口付けされた。チュッと触れた唇が直ぐに離れてしまって、物足りない。


「王翦様…。」

「物欲しそうな顔をして、随分と欲深くなったものだな。使用人として邸に来たときとは、大違いだ。あの頃のお前は純粋で穢れを知らず、」

「変わられたのは王翦様も同じです。初めは私を遠ざけて冷たい態度だったのに、一度交われば毎晩のように私を求めてきて。それに仮面の下の素顔が、こんなにも優しいお顔をされていたこと。王翦様は欲深い私はお嫌いですか？」

「どうだろうな。だが、私は嫌いな奴を手元に置いたりはしない。それが…A、お前に対する問いの答えだ」


戦場での王翦様を私は知らない。
私が知っているのは、素顔の王翦様だけ。

私にかけてくれる言葉も、触れてくれる優しい手も、私だけが知っている。

彼女の流した涙の訳。1　呉鳳明　(葵咲様、いぶ様リク)→←仮面の下の素顔。1　王翦×王賁　(ハル様リク)

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