唯一無二の花嫁。3【キングダム】

141.翻弄されるのは貴方。5　桓騎side ページ43

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白い頬を赤く上気させ、Aは荒い呼吸を繰り返す。渇いた咳を時々したかと思えば、痛みで眉間に皺を寄せる。額に浮かんだ汗を手で拭い、暑いのかと胸元を少し開けてやれば見えたのは肌に浮かぶ花の文様。

そっと手を伸ばしそれを指でなぞれば、甘い香りが漂う。蜜を求めて引き寄せられる虫のように、その文様に唇を近づけ優しく吸い付いた。


「ん…っ」


吐息混じりにAは可愛い声を漏らし、隣で寝ている俺の方へと寝返りをうった。

いつもの俺なら、相手の女のことなど気にも止めず、自分のしたいように自分の思うように抱いていただろう。力で抑えつければ、女などどうにでも扱うことができる。

当初はそう言う目的で、こいつをここに連れてきたはずだ。

それが蓋を開けたらどうだ。翻弄してみせろとカラかった俺が、こいつに完全に翻弄されるなんて。

らしくないと思う。

嫌がる事をして構って欲しいとか、他の男に抱かれた経験があると聞かされれば嫉妬して。こいつの体調を気にして黒楼にまで探りを入れ。


「ほんと、らしくねェよな…。」

「………父…上…。」


王騎の温もりを探して、Aは俺の胸に顔を埋めてきた。正直苛立ちもしたが、起きていたなら自分から甘えてくる事もないこの状況に、今はそれも悪くないかと思うから不思議だ。

ずっとこのままって訳にはいかねェよな…。

こいつを探して王騎がここにたどり着くのも時間の問題。ただの娘と父親の関係じゃねェなら、どんな手を使ってでも奪い返しに来るだろう。

隠居したと噂され戦場を退いたらしいが、奴の実力は本物。敵に回せば無傷とはいかない。

ほんと…お前の親父は厄介な男だ。


俺に抱かれて安心した表情を浮かべるAに「人の気もしらないで…。」と呟き、華奢な体を強く抱き締めた。



穏やかな時間は、朝早く起こしにきた「お頭、大軍だっっ！！」と叫ぶオギコの声で壊されることになる。

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