唯一無二の花嫁。7【キングダム】

334.元気付け。 ページ47

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_______六日目。

政が倒れた報告は蕞の兵士達に知れ渡る事になった。精神的支柱を失った穴は大きく、気力だけではもはやどうにもならない状況にまで追い詰められた。腕を足を動かすのもやっとで、終わりの見えない戦いに兵は希望すら抱けない。


「政の様子は？」

「良いとは言えない…。政の事だからじっとはしてないと思うけど…。」

「だよな…。この勝敗を握っているのは政、」

「きゃっ！？」


不意に触られたのはお尻。触られたと言うか、揉まれたと言うか。ムニムニと感触を楽しむような触れ方に、振り向けばその相手が信だった。


「信、お前何やってんだ！！」

「いや、Aを元気付けようと、」

「ふざけんな！この大バカヤロウ！！」


バキッと鈍い音に、貂から殴られた信は鼻血を出していた。


信なりの気遣いのつもりでも、触られた私としてはなんだか…。


「A、こんな変態ヤロウはほっとけ！」

「そうなんだけど…信、鼻血出てるから…。」


応急処置にと懐から出した手ぬぐいで鼻血を拭いてあげようと伸ばした手に、信は「平気だ…。」と後ずさる。


「今さら何よ。人のお尻に触っといて、頬に触れるぐらいで恥ずかしがる事ないでしょ？」

「アレはその場の勢いって言うか…、」

「もう、じっとしてて。顔も汚れてるから一緒に拭いてあげる」


離れた距離を私から近づけ、背伸びをして信の頬に触れる。ゴシゴシと肌を擦る私をチラッと見ては目を逸らし、またチラッと見る。信の頬に朱がさすのは擦られた摩擦だけではなく、私が触れているせいもあるのかも。

信が私に特別な想いを抱いているのは知ってる。
好きだと直接言われた事もあった。


「マジで……キスしてェ…。」

「え…、」

「距離縮めて来たのお前の責任。目の前に欲しいモンちらつかされたら我慢できなく、」

「我慢しろ！これから戦が始まるってのに、盛んな！そんでもって信はAから離れろ！」

「おっ、テンも少しは元気出たか？今日が正念場だって政も言ってたぜ」


踏ん張りどころだなと笑って去って行く信の後ろ姿に、「はぁ…余計疲れるっての」と貂はため息を吐く。


「でも、信のおかげで元気出たのは本当かも」

「まぁな。確かに、いつまでもメソメソしてるのらしくねェよな」


項垂れている兵達に声をかけて回る信を見て、貂は気合を入れるべく自分の頬を叩いた。

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