333.気づきたくない。 信side ページ46
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「あのさ政……昌文君のオッサンがよ。お前だけ逃すっつってるけどどうする?」
「死んでも断る」
「………だよな」
わかりきった返答。
政の成長を側で見守ってきた側近達ですら、政の性格をわかっていない。
いや、わかっているからこそ俺に説得役を頼んだのだろう。
大王を失うことは秦の滅亡になりかねない。
大王の存在、言葉は多くの民の心を動かす。
歴代の王ですら成し遂げられなかった偉業。その光が消えれば残った末路は絶望しかないと、政を脱出させてくれと昌文君は俺に頭を下げた。下僕であった俺にまで頭を下げらければならない逼迫した状況なんだ。
「俺の説得役を任されたのか?」
「まぁな。みたところ交渉は上手くいかなかったけど…。」
「政の怪我を考えれば…昌文君さんの気持ちもわからなくはないよね…。ずっと政を支えてきた人なんだから」
「政が素直に従うと思ってるなら、オッサンもまだ甘ェよな。融通のきかない頑固者の面してんのによ」
「お前に言われたくはない。俺は自分の信念に従ってるだけだ。だがそうだな…Aの言葉なら俺は素直に従うだろうがな」
寝台の縁に座っているAの腰に手を回す政に、俺は「…昌文君のオッサンとこに行くの。Aも一緒に来てくれ」と、少しの時間でもAと政の仲を邪魔したかった。
弱っている政には悪いとは思う。
瀕死の重傷を負って、お前がAを必要としてることも。
「信、昌文君さんのところ行かないの?」
「ああ、行く…。」
「A、また後で顔を見せてくれ」
「うん。政も体を休めて、」
二人の間に流れる時を見たくなくて、乱暴にAの手を掴んだ俺は部屋を出た。
「どうかしたの?」
「お前が…スッゲェ遠くに行くような気がして。俺と漂、三人でいた時が一番近くにお前を感じた。けど、今は握ってるこの手も…握っているはずなのに遠くに感じるのは…お前に俺への気持ちが、」
「信…。」
「こんな時に不謹慎かもしれねェが…お前を抱きしめてもいいか?お前から距離を取ろうとする俺を、前に抱きしめてくれた事あっただろう?その時…嬉しかったから…。」
Aの腕を掴んでいた手を放すと、そっと自分の胸へとAの体を抱き寄せた。
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bluemoon(プロフ) - イルカさん» コメントありがとうございます。推しが同じ読者様に会えて嬉しいです。花嫁本編では王騎将軍の救済ルートを避けてしまったので、中編集で幸せになっていただきたいと思います。王騎将軍とのお話久しぶりに書く気がします。まずは花嫁8ですね。頑張ります! (2020年12月27日 8時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
イルカ - 私は王騎将軍オシなのですっごく楽しみです!!シリーズ8も楽しみにしてます。 (2020年12月26日 23時) (レス) id: 4dcbd5d17d (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - ノンさん» テストお疲れ様でした。アニメ楽しみですね!どんな声優さんが演じてくれるのか、情報を解禁されるのもワクワクしますね。私ももう少しでお仕事が長いお休みに入るので、更新頑張ります!作品に遊びに来ていただいてありがとうございます。 (2020年12月21日 21時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
ノン - 執筆活動お疲れ様です!!無事にテストが終わりゆっくりできる時間が出来たので小説を読みに来ました!これからの展開が楽しみです!春にはキングダムのアニメ3期も再開されるので今からキングダム熱を上げています笑笑 (2020年12月21日 17時) (レス) id: a804f7d386 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - Tomoyoさん» お久しぶりです。三連休ですか、いいですね。明日から私はまた仕事です…。時間を見つけてこれから更新頑張りたいと思います!コメントありがとうございます。 (2020年11月22日 21時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:bluemoon | 作成日時:2020年6月20日 15時