300.十五日目。2 ページ12
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蒙武軍に触発され、楚の汗明軍も動き出した。大将を上手く引きずり出し、敵の懐に深く入りこむ事が出来れば、後は力のみの戦い。蒙武将軍の最も得意とする戦術。
「父上の軍ばかりに気をとられていると…前から別働隊が現れてきたよ」
「凄い砂煙……戦車隊ですか?」
「どうだろ…なんか嫌な感じがする…。」
砂煙の向こうに見える戦車隊。その向こう側を見ようと目を凝らすが、舞い上がる砂塵と煙に視界が悪い。荷馬車を引く数に対し、舞い上がる砂煙の量が尋常じゃない。
「まさか、煙幕…!!」
それが罠だと、気づいた時には手遅れ。
下から突き上げてくるような振動。耳に聞こえてくる足音は人や馬のものではなく、もっと大きな大気を震わすほどのもの。
「象…!?」
「Aちゃん知ってるの?見たことあるとか?」
「知ってると言うか…。」
この世界では見慣れない生き物でも、私のいた現実の世界で象を知らない人はまずいない。メディアや、それこそ動物園に行った時に目にしたことはある。
見たと言っても遠く離れた檻の中からで…。
「楚より南方の方にいる生き物だと、話には聞いた事があります。戦用に開発され、人を襲うよう開発されたものだと…。長年生きてきた私も、この目であのような生き物を見るのは初めてでございます」
「じィも見た事ないんだ。いくら強者揃いの騰軍でも…あんな巨大な相手だと少々骨が折れそうだよね…。」
全身が分厚い甲冑に覆われ、剣では致命傷を与えることは出来ない。間合いに入りこむ前に屈強な足に薙ぎ倒され馬ごと兵が上空へと飛ぶ。破壊力は戦車隊を遥かに上回る。未知の生き物に遭遇し、臆した者達が歩みを止めたなら、待っているものは死のみ。
だが、先鋒を任された録嗚未軍・干央軍も混乱しながらも引くことはしなかった。統率の取れた攻撃に、指示を出している者がいるといち早く気づき、敵の穴を狙う。目くらましで舞い上がった砂煙が収まり見えたのは、象の上に乗り動かしている敵の姿。
姿が見えたのなら、ただ一点のみに狙いを絞ればいい。
「やっぱ凄いや…伊達に死線を潜り抜けてきてはないよね。元王騎将軍の将達って…敵に回したら厄介な相手だけど、味方ならこんなに心強い将達はいない」
「いずれは蒙恬様も、あのような強者になる事をジィは願っております」
「ハハ…俺には荷が重いや」
配下の言葉に、蒙恬さんは苦笑した。
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bluemoon(プロフ) - イルカさん» コメントありがとうございます。推しが同じ読者様に会えて嬉しいです。花嫁本編では王騎将軍の救済ルートを避けてしまったので、中編集で幸せになっていただきたいと思います。王騎将軍とのお話久しぶりに書く気がします。まずは花嫁8ですね。頑張ります! (2020年12月27日 8時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
イルカ - 私は王騎将軍オシなのですっごく楽しみです!!シリーズ8も楽しみにしてます。 (2020年12月26日 23時) (レス) id: 4dcbd5d17d (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - ノンさん» テストお疲れ様でした。アニメ楽しみですね!どんな声優さんが演じてくれるのか、情報を解禁されるのもワクワクしますね。私ももう少しでお仕事が長いお休みに入るので、更新頑張ります!作品に遊びに来ていただいてありがとうございます。 (2020年12月21日 21時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
ノン - 執筆活動お疲れ様です!!無事にテストが終わりゆっくりできる時間が出来たので小説を読みに来ました!これからの展開が楽しみです!春にはキングダムのアニメ3期も再開されるので今からキングダム熱を上げています笑笑 (2020年12月21日 17時) (レス) id: a804f7d386 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - Tomoyoさん» お久しぶりです。三連休ですか、いいですね。明日から私はまた仕事です…。時間を見つけてこれから更新頑張りたいと思います!コメントありがとうございます。 (2020年11月22日 21時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:bluemoon | 作成日時:2020年6月20日 15時