289.父と娘。 ページ1
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楚軍大将と騰軍大将の一騎討ちが始まったと聞かされ、馬を走らせる。乱戦が繰り広げられていると覚悟していたが。騰軍が本陣近くまで攻めいったおかげか、その隙間をぬって一騎討ちの場へと到着した。
「録嗚未さん…!」
「何故、Aがここに!?」
録嗚未さんの声に臨武君さんと対峙していた騰さんが振り向いた。一瞬驚いた表情をしたが、またいつものようなポーカーフェイスに戻ってしまった。
地に倒れた鱗坊さんの亡骸。共に戦場に出て、稽古にも付き合ってくれて、優しく見守ってくれた父上の配下の一人。かつて六国が恐れた王騎軍を支えた将達が弱いわけではなく、敵国の将達も互角の力を持っているだけだ。
以前楚軍に行った時に、項翼さんは教えてくれた。自分の上官である臨武君さんの武功を。楚軍の南には百越という蛮族がいる。例えるなら山の民のような、戦に長けた強者の戦士。その集落を見つけては陣をしき、勇猛な将を葬ってきた。その数は百を越え、強者を食らう事で上へと登りつめた将軍。実力は本物。臨武君を前にして勝てる奴はいないと、誇らしげに語っていた。
「やはりお前は敵国の間者だったか。楚軍の男に取り入ろうとしていたようだが、そんな事は俺がさせん。秦軍を葬った後にお前を捕虜にし、男どもの――」
重く鈍い音が辺りに響き、騰さんの振り下ろした剣を臨武君さんが寸での所で受け止めた。
「我が娘を侮辱するのは止めろ。お前はAの何を知っていると言うんだ。人となりを知らず、物事を判断するのはお前の器の小ささが知れる」
「この女が……娘だと?」
臨武君さん同様、驚いたのは私も同じ。何も知らない敵兵ならいざ知れず、王騎将軍と私の関係を知っている将達はどういう事だと混乱していた。
騰さんが父上って…。
「いや、まだ娘ではないが。殿の亡き後、Aの見届け人は私だ。生前、殿にも自分に何かあった時はAの事を頼むと託された」
「騰さん…。」
「案ずるな。私は強い、目の前にいるこの男より。殿に認められた実力は、奴よりも遥かに上だ」
「舐めた口を聞くなっ!!」
巨体から振りおろされた臨武君さんの攻撃を受け止めたものの、騰さんは後ろに飛ばされ額からの出血。
「騰さん!」
「A、父の勇姿をその目にしっかりと焼き付けろ」
こんな状況でも、騰さんは何時ものように軽口を叩いた。
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bluemoon(プロフ) - イルカさん» コメントありがとうございます。推しが同じ読者様に会えて嬉しいです。花嫁本編では王騎将軍の救済ルートを避けてしまったので、中編集で幸せになっていただきたいと思います。王騎将軍とのお話久しぶりに書く気がします。まずは花嫁8ですね。頑張ります! (2020年12月27日 8時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
イルカ - 私は王騎将軍オシなのですっごく楽しみです!!シリーズ8も楽しみにしてます。 (2020年12月26日 23時) (レス) id: 4dcbd5d17d (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - ノンさん» テストお疲れ様でした。アニメ楽しみですね!どんな声優さんが演じてくれるのか、情報を解禁されるのもワクワクしますね。私ももう少しでお仕事が長いお休みに入るので、更新頑張ります!作品に遊びに来ていただいてありがとうございます。 (2020年12月21日 21時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
ノン - 執筆活動お疲れ様です!!無事にテストが終わりゆっくりできる時間が出来たので小説を読みに来ました!これからの展開が楽しみです!春にはキングダムのアニメ3期も再開されるので今からキングダム熱を上げています笑笑 (2020年12月21日 17時) (レス) id: a804f7d386 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - Tomoyoさん» お久しぶりです。三連休ですか、いいですね。明日から私はまた仕事です…。時間を見つけてこれから更新頑張りたいと思います!コメントありがとうございます。 (2020年11月22日 21時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:bluemoon | 作成日時:2020年6月20日 15時