0日目 ページ1
「Aさんの命は、良くてあと7日ほどしか持ちません」
医者にそう告げられた時、それこそ私は心臓が止まってしまうのではないかと思った。
始まりは、慢性的に起こる指先など末端のしびれからだった。
日常生活に支障が出るほどではなかったし、放っておけばそのうち収まった。
しかし、麻痺が起こる間隔は日を追うごとに着実に狭まっていく。
それだけでなく、だんだん末端から中枢へと範囲が拡大していった。
そして、先日横断歩道を渡る最中に、突然足が痺れて立てなくなり、危うく死にかけてしまった。
これはまずい、と急いで大手の病院を訪ねて診察してもらった。
そして今、余命宣告をされているという状況に至る。
「Aさんの病気は世界でも症例を見ないものです___"致死性慢性麻痺"、とでも名付けましょうか。
確実にあなたの体は正体不明の何かに蝕まれている。
症例に気づいてから現在までの進行具合を考えると、心臓に麻痺が到達するまで7、8日といったところでしょうか。
そして、心臓に到達すればおそらく……」
「死ぬ、ってことですか」
「……そうなると思われます」
頭は意外と冷静で、医者の先生の話はすんなり理解できた。
「そっか、私__……
死ぬんだ」
それも、あとたった1週間で。
私が世界初の発病者ということは、治療する薬も、手術もないのだろう。
「あ…………」
自分でも気づかないうちに、涙がぽたぽたと零れ落ちていた。
先生は気の毒そうな顔で私を見つめた。
「当院としては、治療の面では…遺憾ながら、打つ手はありません」
そうだろうな、と思った。
泣いているからか頭がボーッとする。とにかく、家に帰ってもう眠ってしまいたいと思った。
しかし、先生の言葉が私を一瞬で現実に引き戻した。
「ですが、最善は尽くさせてもらいます___
Aさんの残りの人生が、より良いものになるように。
どなたか余生を共にしたい方がいらっしゃったら教えてください。
お身内の方でも構いませんが、アイドルとかタレントとか、俳優とか、政治家なんかでもいいし__…あるいは犯罪者でも。
当院が警視庁と連携し、意地でもその方をお連れして、あなたの最期を見届けることを義務とすることをお約束しますので」
「___え?」
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矢野いと(プロフ) - 百面相さん» こちらこそコメントして頂きありがとうございます。とても力になります!完結まであと少し、お付き合い頂けると嬉しいです。よろしくお願いします! (2019年5月20日 17時) (レス) id: 44c4b06050 (このIDを非表示/違反報告)
百面相(プロフ) - ストーリー物で唯一楽しみにしている作品です!ニヤニヤしながら見させて頂いています…。素晴らしい作品を有難うございます! (2019年5月18日 22時) (レス) id: 5fbb166415 (このIDを非表示/違反報告)
矢野いと(プロフ) - ぱぴぷぺっぽー!さん» そう言ってもらえると嬉しいです。頑張ります! (2019年4月28日 9時) (レス) id: 44c4b06050 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴぷぺっぽー! - おぁぁぁあ!!!!!凄い好み!この小説!!!更新頑張ってぇぇ!! (2019年4月24日 19時) (レス) id: 73667381e3 (このIDを非表示/違反報告)
矢野いと(プロフ) - すずさん» ありがとうございます!励みになります(^-^) (2019年4月20日 19時) (レス) id: 44c4b06050 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:矢野いと | 作成日時:2019年4月9日 12時