鬼 ページ4
市場の外に向かい歩いていくと、前と変わっていたところがいくつかあった。
そりゃそうか。土地が切り拓かれる前は木々が生い茂るだけの森だったものね。
今や規則正しく建物が立ち並び、人の声がやまない。
「人間が勝手に栄えるのは構わなぃんだけど、流石にあたしが住んでる山にまで手は出さないよね?」
誰もいないのに、ついぼやく。手え出したら殺す、まじ殺す。
街の端辺りまで行ったのかしらないけど、だんだん人の数が減ってきた。ぽつぽつ、外で会話する人がいる程度。
更に郊外へ。しばらく経って、あたしの目の前にお屋敷が現れた。おっきい。立派にうだつの上がった家だ。
だけど賑やかな都の中心部とは違い、そこだけ静かで陰気な感じがする。どんより暗い。とても、人がいる風貌には見えない。
さらに、辺りを散策してみる。まああたりまえだけど、ハリボテとかじゃなかった。瓦屋根だし、三回建てくらい?だし。
「(……ちょっとだけ)」
ただのちょっとした好奇心だ。お化けなんて見慣れてるし、襲ってきたとしてもぼこぼこにしてやれる。
人の家に入っちゃダメなんて決まりはないし、そんなのがあったとしても、あたしは守る必要も義理もない。鬼だから。
鬼がこういうときは屁理屈とはいえ口実にできるのは、ぶっちゃけ嫌いではない。
「とゆうことで、お邪魔しまーす」
何かめぼしいものがあったらちょろまかしちゃろ。絢爛豪華だし、一つや二つ何かなくなってたって気づかないよね。
一応声を張り上げて挨拶してから、がららと家の引き戸を開けた。

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作者名:ひすい | 作成日時:2020年12月1日 18時