鬼 ページ3
市場の喧騒は、木の上から聞くよりずっとうるさかった。
あたしは恐る恐る足を踏み入れたけど、すぐ引っ込めた。あまりにも人口密度高くない!?
人間ってこんなとこ歩いてんの!?
気を取り直して、店が立ち並ぶ大通りを歩く。道行く人々の中にはちらほらあたしに好奇の視線を向けるやつもいる。
へんな格好してないか不安になって、自分の服装を今一度確認。
その辺のお嬢さんが着てそうな青い着物に、髪には紅い牡丹のかんざし。ちゃんと角は隠してあるし、髪はまとめてくくり上げたけど、特に目立つ要素はないかな?
…と思ったのとほぼ同時に、自分の髪色のせいだと気づく。皆さん黒髪黒目で揃ってらっしゃいますもんね。
うーん、聞かれたらアレだな、染めてますって答えよう。髪を染めるだなんて聞いたことないけど。
そんなこんなしてる間にも、たくさんの人とぶつかる。中には不機嫌なおっさんとかもいて、睨みを利かせてくる。おっさんより強く睨み返したら、ひっなんて情けない悲鳴をあげてそそくさと立ち去っていった。
あたしは実質初めての街に流石に参ってしまい、人気のないところに行くことに決めた。
別に、軟弱とかひ弱じゃない。慣れなかっただけ。

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作者名:ひすい | 作成日時:2020年12月1日 18時