鬼 ページ18
「あたし先に行くから、あたしが呼んだら入ってきて。それまで二人はここで待ってて」
「分かりました」
「あいわかった!」
床の抜けそうな階段に二人を待機させる。ちょっとかわいそうだけど。
自分とあたし以外の女の子である『桜ちゃん』に早く会いたいと、うきうきした様子で体を揺らす漆花を見て、頬が弛んだ。
なんだか前来た時より緊張する。友達を紹介するからかな。とりあえず階段と部屋を隔てた戸越しに、そっと声をかける。
「桜ちゃん桜ちゃん。紅だよ。今日も来ちゃったんだけど、開けてもいい?」
「紅ちゃん?」
少し間を開けて、心なしか少し弾んだような返事、というか確認が聞こえた。
実を言うと、あたしはやっぱり桜ちゃんが幽霊なんじゃないかって思ってたとこもあった。すごく綺麗に笑うし困るし、ちょっとでも目を離したらそれこそ、桜みたいに、人の夢みたいに儚く散って消えちゃうような気さえしたから。
でも戸越しに聞こえた声はやっぱり幻じゃなくて、どうぞと続けた。よかったと内心ほっとした。
戸を開けてひょいと顔を出すと、笑った桜ちゃんが迎えてくれた。
「いらっしゃい、紅ちゃん!来てくれて嬉しいわ」
この前はあまりお話しできなかったから、と嬉しそうに言う桜ちゃん。やっぱり可愛い。これは夜鬼も惚れるな。許さないけど。
「ね、桜ちゃん。お喋りの前にいいかな」
「なんですか?」
「紹介したい子がいるんだけど」
入ってきて、と例の合図を下す。途端、がたがたっと大きな物音と共に二人がなだれこんできた。え、二人だよね?
桜ちゃんがびっくりして口を開けている。けど目はきらきらしてて、好奇心に溢れている。
重なった二人はいててとうめきながら起き上がりほこりを払うと、桜ちゃんの方に寄った。
「はじめまして!ぼく、漆花っていいます。紅の仲間なの。桜ちゃんに会いたくて来ちゃった!」
「夜鬼といいます。桜さん、紅さんをよろしくお願いします」
「とりあえず夜鬼、ツッコミ回収させてくれ」
「なんすか?」
「なんすかじゃないんだよ。なんでお前あたしの保護者みたいなこと言ってんの。逆だろ。そしてどういう意味」
「そのまんまですけど」
「………」
漆花と桜ちゃんを置いて言い合い。漆花はけらけら笑ってるし、桜ちゃんは事の状況に理解が追い付いていないらしい。頭に疑問符がいくつもついて回ってる。
「えーと、今から説明するね」
「は、はい」

4人がお気に入り

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ひすい | 作成日時:2020年12月1日 18時