鬼 ページ12
「やはり、私の髪は変わっていますか?気持ち悪い…とか」
女の子が、少し眉を下げて笑いながら問いかける。あまりにもじっと見つめていたから、へんだと思っていると考えたのかな。
「ううん。そんなことないよ。確かに珍しい色だけど、すごく綺麗」
それに、人間にしては珍しいだけ。あたしだって、髪と目が派手な色してるし。
女の子はぱっと顔を輝かせて、今度はほんとににこっと笑った。
「あなたの髪と目も綺麗ですわ!空の色に、藤の花の色。不思議だけど、とても素敵です」
「ほ、ほんとに?ありがとう、ございます」
思わず敬語になる。少し触ってもよろしいですか?と問われ、勢いに負けて了承。指で梳かれて、走ってて絡まった髪がだんだんと解れていく。
他人に綺麗な髪と目って言われたことなんて、ほとんどない(漆花に言われたことはある)。
お世辞を言っているわけでもなさそう。他の人の目にそんな風に映っていたという事に、ちょっぴりうずうずした。
彼女はさらに、自分の上半分の髪を結わえている紐をほどき、それを使ってあたしの髪をいじり出した。
「ちょっと、それ君のじゃない」
「いいのです!私は本を読むこと以外に使いません。あなたの方が、きっとよく動くでしょ」
そんなこと言っている間に完成。あたしの髪は、高い位置で一つにまとめられていた。腰の位置にあった髪が、脇腹辺りになってる。神業。
「おー…首の辺りがスースーする」
「でしょう?そっちの方があなたらしくていいわ!」
興味本意だけで人の家に入れるくらい、元気と行動力がありますものね、と笑いかけられる。うっと良心に刺さるが、何故だか皮肉めいたものは感じない。本心らしい。
「…あ、そろそろ行かなきゃ」
ふと、夜鬼と漆花と来ていたことを思い出す。二人を探さないとだめだった。
「まあ…何か予定でも?」
「仲間を探さないとだめだった!もう行かないと…」
「そうですか」
女の子は少し残念そうに眉を下げた。あたしもちょっと寂しい感じになる。
「あ、そうだ。君の名前、何て言うの」
「私…ですか?」
うーんと首を捻ってすぐ、答えた。
「申し訳ないのですが私、『姫様』としか呼ばれたことがないのです。他の人のいう自分の名前を知りません。おかしな話でしょう?」
名前を知らないなんて、初めて聞いた。よくよく考えてみたら、あたしも同じだったんだけど。頭領だったりお頭としか呼ばれたことがない。

3人がお気に入り

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ひすい | 作成日時:2020年12月1日 18時