プロロオグ*鴉* ページ1
─これは、昔々のはなしです
あるところに、鬼がいました
鬼は、とても強大な力を持っていました
それでいて優しく、明るかったため、手下とも、仲間とも、家族とも呼べる鬼達からも慕われていました
鬼は、みんなが大好きでした
ある日、鬼は外に出ます
鬼は人間と呼ばれる生き物がいるところに行きました
鬼はそこで、一つの宝石を見つけました
金の髪に青い目、月みたいな肌の、人形のような宝石
宝石は、暗くてほこりっぽい、古い木の箱に、小さなお守りと一緒に入れられていました
宝石と話した鬼は、宝石を大好きになってしまいました
鬼は外に出られないという宝石を外へ出してあげたくて、自分の家に連れ帰ってしまいました
宝石は鬼に頼んで、自分の家族も連れてきて欲しいといいました
彼女には双子の弟がいました
自分よりも泣き虫で、自分よりも可哀そうだといいます
鬼は彼女の願いを聞き入れ、弟をつれてきました
そして二人とも、鬼にしてしまったのです
三人は長い間、楽しく暮らしていました
しばらくしたある日、人間が鬼の家にやってきました
突然のことに、鬼達はびっくりします
人間達は、鬼をよく思っていなかったのです
あまりにも理不尽な理由で、鬼の家族を殺していきました
三人はそのとき、特に大好きだった二人をなくしてしまいました
その拍子に、宝石は「なみだ」もどこかになくしてしまいました
残ったのは、三人と一匹だけでした
そんなある日、鬼は一羽の鴉に出会いました
鴉は、「鈴」を肌身離さず持っていました
その鈴と鴉がなくした二人に見えてしまう鬼は、鴉を嫌います
鴉は、鬼と双子にある提案をしました
三人はびっくりしたものの、やがて決心しました
三人は鴉に連れられて、「逃れ者」になりました
名前のない世界に連れてこられた三人は、その世界から人間の手助けをするようになります
もう人間への恨みはなかったのです
今でも双子は「春」を、鬼は「夏」を守っています
双子は「コウミヤ様」鬼は「キョウセツ様」と呼ばれ、人間から好かれるようになりました
神様とは、こうして生まれるものなのです
「今でも三人は、お天道様のもとから私達を見守ってくれているのです……めでたし、めでたし?」
口頭での『言伝』を終えた鴉は、笑った。

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作者名:ひすい | 作成日時:2020年12月1日 18時