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予想に反して、永瀬はくつろいだ表情をしていた。
数時間前に栗木さんの顔を思い切り殴った男とは思えないほど、リラックスしている。
膝の上の白猫は、丸く、温かく、悪意から最も遠いところにいた。
ぐるるる、と喉を鳴らす音を聞いて意味もなく感動してしまう。
嫌でも優しい気持ちになる。
「栗木さんな、永瀬のこと訴える、言うてた」
「そうか。」
永瀬の表情は変わらなかった。
変わらず、手にすり寄ってくる猫たちを撫でている。
「なんで、そんなに強く殴ったん」
「言うたやろ、猫を苛めたから。」
「でも、あんな強く殴らなあかんかったん?栗木さん、何ヶ月かは鼻固定せなあかん言うてたよ」
「悪いことしたなぁ」
「……永瀬。」
私の膝の上から、白猫が音もなく降りる。
あまりに軽くて白いから、永瀬の魂みたいだった。
「ほんまのこと、聞かしてよ。なんで殴らなあかんかったんか」
永瀬はしばらく、目を伏せてじっとしていた。
永瀬のそんな表情を見たのは初めてだったが、私は何を聞いても驚かない自信があった。
初めて、永瀬のことを知りたいと思った。
私の、大切な友達。
「………この猫は、」
永瀬の声は乾いていた。
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ふてぃか(プロフ) - 忙しいと思いますが更新待ってます ! (2019年8月16日 17時) (レス) id: 6381a07ad2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:琉叶 | 作成日時:2019年3月24日 1時