恋を刻んだ僕たちは、〈Sho,Hirano・Ren,Nagase〉 (ページ33)

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「最初に彼に会った時も、廉はガールフレンドを連れていました。その女の子は私のかつての教え子でね。彼を舞台に出させてほしいって直談判してきた。

会ってすぐ、彼女が廉のことを本当に好きなこと、廉は彼女のことが全然好きではないこと、

そのことに彼女も気づいていることも分かりました。

彼女がそれでもいいから廉のそばにいたいと思っていることも。

「危ない」と思った。
廉のような男の子は、危ない。

私だって若くはないから、彼のような男の子の危険さも、そういう男の子たちにはまって抜け出せなくなる女の地獄も、分かっていたんです。

私は、一度離婚しています。
感情的になることにこりごりしていたし、恋愛から離れたところにいたいと思うぐらいには、疲弊しました。

最初はどんなに甘やかできらきらした恋愛も、終焉のときは地獄です。
廉のような男の子との恋愛なら、とくに。

分かっていたはずなのに、のめり込んでしまった。

出会った頃から、この人はわたしのことを絶対に好きにならないだろう、という強い予感だけがありました。」

私が「平野紫耀」に対して最初に感じたことをこの人も感じていた。

彼女の顔を覆う白いガーゼが眩しいくらい白く光っている。

「最初は、本当にただ純粋に惹かれました。

彼はいつも何かに怒っていた。不遜で、いい顔をしてると思った。

私は廉よりもうんと年上だし、それが面白いと思ってね。私から声をかけました。

その頃、ちょうど彼はもといた劇団を辞めて舞台を探してたから、役に立てると思った。

色恋とは全く違う次元で、彼の近くにいたいと思いました。

今思えばそれはれっきとした恋だったんですね。

それに気づいていないフリをして、私は狡猾なやり方で廉に近づいただけだった。」

栗木さんは、自分の顔を覆いガーゼをゆっくりと撫でた。

まるでそこに愛する人に書いてもらった自画像があるみたいに、撫でた。

猫を愛でる永瀬の顔が思い浮かんだ。

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