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「あの、失礼します。くりきさん、」




本人から聞いたわけではないのに、彼女の名前を知っていることを不審がられないか少しびくびくしながら、カーテンをそっと開ける。

栗木さんは永瀬の家で初めて会ったときよりも「被害者」ぽくなっていた。

鼻に貼られた大きなガーゼが白く痛々しい。





「栗木さん、あの…こんにちは」


言ってからしまった、と思った。
呑気に「こんにちは」などと挨拶している場合ではない。急に恥ずかしくなる。




でも栗木さんは私の口調を真似てゆっくりと「こんにちは」と返してくれた。
警戒はしているが、数時間前ほどの敵意はないらしい。





「私、すみません、夏目Aといいます。あの…怪我は大丈夫ですか」

「いえ…私の方こそ、すみませんでした。驚かせました。」





栗木さんはベッド脇の小さな丸椅子に座るよう促してくれた。



できるだけ音を立てないよう注意しながらそこに腰掛ける。






「折れてるみたいです。鼻。」

「え、」

「彼、手加減なしでしたね。」




私をまっすぐに見つめながら栗木さんは言った。





「訴えようと思います。」

「え、永瀬を、ですか。」






こくんと小さく、でも確かに頷く姿は、数時間前に号泣していた人とは全くの別人に見えた。







教師のような正しさと頑固さが彼女の体を纏っていた。

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ふてぃか(プロフ) - 忙しいと思いますが更新待ってます ! (2019年8月16日 17時) (レス) id: 6381a07ad2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:琉叶 | 作成日時:2019年3月24日 1時

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