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あかん、身もたへん、と思った。
脱力以上の崩壊を感じながら、私はそれでも、彼を見た。
彼は結局、電話を取らなかった。
テーブルに置かれたそれを、伏せただけ。
その手がはっきりと震えているのを、私は見た。
「俺のこと、家で、待ってる。」
私は彼に、帰らないで、とも、帰ってくれ、とも言えなかった。
強烈に彼を求めていたが、それと同時に、彼といる恐怖で目が眩んだ。
私と同じように、「平野紫耀」も帰らなければ、とも、帰りたくない、とも言なかった。
彼は鳴り続ける携帯電話を見ながら、いつのまにか、はらはらと、泣いていた。
「平野さん、」
私は、自分の声の絶望感に驚いた。
これが自分の声だなんて信じられないほど、それは掠れ、嗄れていた。
私たちは、ベッドの上でお互いの腕を痛いほど握り合っていた。
とても切実な、つながり。
「Aさん、」
彼は、私の名前を呼んだ。私はそれを聞いて、また飽きずに溶けた。
彼の髪からは私の家のシャンプーの香りがして、私はそこに顔を埋めて、大声で泣いた。
「ほんまに、ごめんな。」
彼は、ぎゅう、と私の頭を押さえつけるように腕いっぱいに抱き締めた。
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ふてぃか(プロフ) - 忙しいと思いますが更新待ってます ! (2019年8月16日 17時) (レス) id: 6381a07ad2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:琉叶 | 作成日時:2019年3月24日 1時