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永瀬から電話があったのは、大雨の日だった。
私は、相変わらず、絵を描くわけでもなく、外にでるわけでもなく、朦朧とした毎日を送っていた。
明るくなった画面に「永瀬」の文字を見たとき、懐かしさと、急に襲ってきた心細さで、胸の奥が熱くなった。
「もしもし?」
「もしもし、俺。」
「うん。どうしたん?」
あれ、なんか変やな、と気づいたのは電話の向こう側が不気味なほど静かだったからだ。
部屋の中にいるんだろうか、車の音も細かな雑音さえも聞こえない。
ただ、永瀬の声だけが鮮明に耳に届く。
「永瀬?いまどこにおるん、?」
「どこって、家。」
「なんかめっちゃ静かやけど…どうしたん、なんか用?」
「_、今からこっち来てくれん?」
「え、今から?どうしたん、なんかあったん」
「殴ってん。」
「殴った、?」
じわじわとみぞおちのあたりが冷えてくる。
いつもの永瀬じゃない、変や、おかしい、
「永瀬?もしもし?永瀬?」
「なんやねん聞こえてるわ」
「なんて?殴ったって、何を?」
「女の人。」
「なんで、どうしたん、待ってな、とりあえず行くから、」
「落ち着けや、お前が事故る勢いやん」
「だって…!待って、タクシー拾う、」
向こう側からきたタクシーに手をぶんぶん振って止める。
転がるみたいにして乗り込んで、永瀬の家の最寄りの駅名を叫んだ。
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ふてぃか(プロフ) - 忙しいと思いますが更新待ってます ! (2019年8月16日 17時) (レス) id: 6381a07ad2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:琉叶 | 作成日時:2019年3月24日 1時