前代未聞の蘇芳 ページ38
「＿＿本当にもう痛くねぇのかよ」
もうあと五レーン進めば私たちだと言うのにこの状況でそれを聞くのか、と凛をじとりと見る。
「うん、大丈夫。」
もう痛くないのは事実だし、何よりも緊張が勝っている。
何せ先程“好きな人”という遊び心あるお題を引いた生徒が座っている女子生徒に声を掛けゴールした後皆の前で告白をしていた。
万が一私がその状況になってしまったらきっと焦っていただろうからこうして前の人が前例を見せてくれるのは正直ありがたい。
私が好きな人と聞かれて1番に思い浮かべるのは隣にいる凛だ。
けれど好きには色々形があるもので。
そう、私には大好きな友達が1人いる。
私が視線を向けると結月もこちらを見て呑気に手を振った。
結月に小さく手を振り返した後も様々なお題を思い浮かべてイメージトレーニングをする。
ハンカチだったら結月に借りよう。ハチマキ…も、結月に借りよう。前の人達のお題を思い出して当てはめてみると私が借りる9割が結月からでなんとも言えない感情に陥る。
胃が痛くなりそうだとか考え始めたら隣の凛が立ち上がった。
「おい、早く立て」
え、もう？？深呼吸のひとつもしていないのに自分の番が来てしまって割とかなり地獄である。
心臓がバクバクと音を立てた。
＿＿走り出しの合図と共に私は走り出す。お題まで距離が近くて他の人との差があまり生じないことが借り物競争の良いところだと走りながら感じた。
凛が先に着いたのが見えて早いなぁと考えていると凛はお題の紙を見たまま動かなくなっているようだった。
徐々に近づき私が紙を捲ると、お題は“大切にしているもの”だった。
大切にしているもの……
ものは思いつかないけれど、私が今一番大切にしているのは……
バッと反射的に隣に立つ凛へ顔を向けると凛もこちらを見て、目が合った。
いやいや、隣で同じレーンを走っている人を借りるなんて前代未聞である。
咄嗟に結月の方へ視線を向けるとそれとは反対の方へ体の重心が動いた。
「えっ？」
思わず私の腕を引く凛を見上げる。
「俺が借りたいのお前だ。」
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名無し(プロフ) - 真昼さん» コメントありがとうございます。意外と凛視点が需要あるようで良かったです。これからも応援して頂けると幸いです^^* (2023年1月30日 16時) (
レス) id: c37b14cb77 (このIDを非表示/違反報告)
名無し(プロフ) - するめさん» するめさん、続編の方にもコメント頂けて嬉しいです。いつも応援本当にありがとうございます。凛視点はいずれ書きたいと思っていましたが想像よりも長くなってしまいそうです（笑） (2023年1月30日 16時) (レス) id: c37b14cb77 (このIDを非表示/違反報告)
真昼 - 初コメ失礼します！凛視点めちゃくちゃ好きです！！最後まで応援します！ (2023年1月30日 9時) (レス) @page2 id: 3174c03de1 (このIDを非表示/違反報告)
するめ(プロフ) - 続編おめでとうございます〜!!凛視点めちゃくちゃ最高です、、、このお話ほんとに大好きです! (2023年1月30日 5時) (レス) id: 85ee5a5c1b (このIDを非表示/違反報告)
名無し(プロフ) - お酢雨さん» ご指摘ありがとうございます。修正いたしました( _ _ ) (2023年1月29日 22時) (レス) id: c37b14cb77 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：名無し | 作成日時：2023年1月29日 20時
