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にっこりとした天使のような微笑みを彼女に向けた俺は、内心では彼女の弱った姿をあざ笑っていた。

いくら頑固で我儘なAとは言えど、病人となれば気も弱るはずだ。一人暮らしでこんなクソ狭いボロ屋で、寂しく寝ていたのなら尚更。俺のこの温かく優しい言葉にコロッと心を傾けるだろう。

スーパーの袋に眠るハバネロの瓶をちらりと見てから、また笑みを深める。


どんどん聖人君子の女神のような微笑みになる俺をよそに、彼女は赤い顔をだるそうにゆるりと振り、やはり苦しそうに息を吐いた。



「……必要、ありません……。花宮君、すぐ風邪うつるでしょう……?」



正論を包み隠さず言う彼女の言葉に、ぴしりと俺の眉間に皺が入る。
このアマ。人が優しく看病してやると言ってやってんのに。



「……。……大丈夫だよ。今はAさんの方が大変なんだから」


「移ったら大変になるの……花宮くんです。……早く帰ってください。うつりますから」


「やだなぁ、うつらないよ」


「そう言って今年は風邪3回に、インフルエンザA型B型AB型感染して、マイコプラズマに胃腸炎に膀胱炎になったじゃないですか」


「なんでお前んなこと知ってんだよ」



つい本音で突っ込んでしまった口をすぐに噤み、ごほんとせき込むようにごまかす。

目の前の彼女はというと、そんなこと気にも留めない様子で、それなわけでさようならとドアを閉めようとしていた。


ギィ、と壊れそうな音を出しながら閉まるドアの隙間にすかさず足を入れ込む。


急に足をドアの間に挟み、取っ手をひっつかんでは無理やりこじ開け、体をねじ込む俺に彼女は目を丸くして見ていた。何を考えているんだといった様子だ。普段はびっしり決まっている真面目顔をぽかんとさせ、口まで開けている。



「あ、あの……帰ってください。」


「うるせぇよ病人が。黙って看病されてろっつんでんだろバァカ」



貧弱な力で俺を帰そうとする腕を無理やり掴み上げ、部屋に彼女の体を引きずり込む。
先ほどまで紳士的に対応してやろうかと思ったが、予定変更だ。コイツにはやっぱり何を言っても無駄。強引に寝かせて無理やりにでも看病するのが吉のようだ。


二歩ほどで終了する廊下の先には、俺の家の風呂レベルしかないほどに狭いスペースに布団が敷いてあった。そのこじんまりした部屋の大部分を占める布団に彼女を投げいれた。

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鎖月零(プロフ) - Flower*さん» flower!ありがとうございます!!短編の夢主は同じ夢主で書くのが普通だということを今の今まで知らなくて……全員バラバラにしてしまいました(笑)私も短編の方が書きやすくて軽くかけるので楽しかったです!続編頑張ります! (2018年2月26日 18時) (レス) id: e5c976073b (このIDを非表示/違反報告)
Flower*(プロフ) - 1完結(?)おめでとうございます!甘々で読んでてドキドキしてしまいました(*ノωノ) それぞれのお話の夢主ちゃんたちも個性豊かで面白し、何より短編なので読みやすいです。やっぱり零すごい……。続編の方も首を長くして待ってます! (2018年2月24日 0時) (レス) id: 4d95f4e8a2 (このIDを非表示/違反報告)
黛パフェ(プロフ) - 鎖月零さん» めっちゃ楽しみにしてます!!! (2018年2月18日 18時) (レス) id: d3f83fb575 (このIDを非表示/違反報告)
鎖月零(プロフ) - 黛パフェさん» うそぉ……本当に恥ずかしいです(笑)規制かかる系の甘々はあまり得意分野ではないのですが、楽しんでいただけると幸いです……!甘くなるように頑張ります (2018年2月18日 18時) (レス) id: a33d034fdf (このIDを非表示/違反報告)
黛パフェ(プロフ) - 鎖月零さん» 今でもたまに見たりしますよ!黄瀬くんの好きですー!規制とかあまり気にしないタイプなので別のアカウントで見に行きますねー! (2018年2月18日 1時) (レス) id: d3f83fb575 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鎖月零 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2017年12月17日 17時

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