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「え……今日〆切って、もしかしてあの短編のですか……?」
玄関先での宣言に、彼は驚きを隠せずに私に問うた。
表情には焦りと血の気の少し引いた様子がうかがえる。すごく不安そうな瞳がゆらゆらと揺らいだ。
う、、ちょっと罪悪感。
「そ……そうです。3万字全部です。何一つ頭に残ってないですし、言葉も浮かびません。
もしやこれがスランプ!?わぁ、どうしようっ!」
私の職業は小説家であって女優ではない。物語は考えられるけれど、それは二次元での話で三次元のこの世でそんなにうまく立ち回れるはずがない。
ゆえに私の反応はほんのちょっぴりわざとらしいかもしれないのも仕方ないのだ。
…………………オーバーリアクションすぎたかな。
言ってしまったものは仕方ないと、少しだけ額に汗を浮かべながらも彼の方を見てみれば、
こちらを真顔で見ていた。
見事なポーカーフェイス。ナイルブルーの瞳が瞬きもせずにただぼんやりとこちらをみつめている。バレたのか?嘘ってバレたのか?実はUSBに入っていることバレた?書き終えてることバレた?
ヤバイヤバイとあまり知識のない頭の中がパンク寸前になっている。背中に流れる冷や汗もドッと増した。
こんな序の口……スタートにすら立っていない状態で私の作戦がバレてしまっては困るのだ。すべてパーになってしまう。それこそ、小説のデータがすべてなくなってしまったように、全部真っ白に。
__が、そんな顔を青くさせ、泡を食ったような顔をしている私をよそに、彼はポーカーフェイスを少しだけ崩してから口を開いた。
「それは……困りましたね。
一昨日見せていただいたものもですか?」
「そ、そ、そうなんです……っ!
USBメモリに入れたはずなんですけども、あ、あれ〜……?どこにやったっけなぁ」
意外と騙されてくれた黒子さんに感謝しつつ、視線をきょどきょどさせながらもなんとか芝居をしていく。
これが黒子さんの同級生で一度だけお会いしたことのある赤司さんとか、黒子さんと同僚の高尾さんとかだったら速攻で見破られていただろうけれど
彼のあの真っすぐな性格が災いしたのか、案外気づいてない。むしろ疑うという選択肢がないようだ。余計に罪悪感が増す。
「最後に見たのはいつですか?
書き直すよりも探したほうが早いかもしれません」
「そうですね!絶対探した方が早いです!
作業部屋に必ずあるはずですし!!」
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鎖月零(プロフ) - Flower*さん» flower!ありがとうございます!!短編の夢主は同じ夢主で書くのが普通だということを今の今まで知らなくて……全員バラバラにしてしまいました(笑)私も短編の方が書きやすくて軽くかけるので楽しかったです!続編頑張ります! (2018年2月26日 18時) (レス) id: e5c976073b (このIDを非表示/違反報告)
Flower*(プロフ) - 1完結(?)おめでとうございます!甘々で読んでてドキドキしてしまいました(*ノωノ) それぞれのお話の夢主ちゃんたちも個性豊かで面白し、何より短編なので読みやすいです。やっぱり零すごい……。続編の方も首を長くして待ってます! (2018年2月24日 0時) (レス) id: 4d95f4e8a2 (このIDを非表示/違反報告)
黛パフェ(プロフ) - 鎖月零さん» めっちゃ楽しみにしてます!!! (2018年2月18日 18時) (レス) id: d3f83fb575 (このIDを非表示/違反報告)
鎖月零(プロフ) - 黛パフェさん» うそぉ……本当に恥ずかしいです(笑)規制かかる系の甘々はあまり得意分野ではないのですが、楽しんでいただけると幸いです……!甘くなるように頑張ります (2018年2月18日 18時) (レス) id: a33d034fdf (このIDを非表示/違反報告)
黛パフェ(プロフ) - 鎖月零さん» 今でもたまに見たりしますよ!黄瀬くんの好きですー!規制とかあまり気にしないタイプなので別のアカウントで見に行きますねー! (2018年2月18日 1時) (レス) id: d3f83fb575 (このIDを非表示/違反報告)
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