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「……俺は……」
きっと、なりたいものもやりたいともある。
簡単には頷けないその言葉。もしそれにうなずいてしまったら、俺は今まで培ってきたものをすべて失うことにもなる。
自分が自分でなくなるくらいに、つらい思いをしてまで勝利にこだわり、勝ち続けてきた意味が。
父のためにここまで費やしてきたものすべてが、無駄になってしまうのだ。
彼女の前ではなぜか強く言葉を言い返せない。
余裕の笑みすら浮かべられない。ただ、困惑した顔でそちらを見つめることしかできないのだ。
逃げたい、話したくないとすら思うその空間。
同じ立場であるにも関わらず、俺と真逆の答えを導き出した彼女に俺は恐怖すら覚えていた。
「……無欲な人生なんて、きっと、とても退屈だし幸せにもなれないわ。
君ももっと貪欲になればいいと思う。
自分のために生きればいいじゃない。」
私は、自分のために生きたいから、と。
しっかりとした決意の言葉を口にする彼女に、俺はどうすることもできなかった。
婚約は解消できないとも、企業のために赤司に嫁がなければならない、とも。
本来はそれくらいの言葉を出さなければいけないことはわかっている。でも、彼女は俺が強引に捕まえたところで、縛り付けたところで逃げるのだろう。
自分のために、生きるために。
どうしてか、この時。
俺は彼女が羨ましいとすら思ってしまった。羨ましいだなんて感情も初めての感情である。
今までその言われる対象にはなろうとも、いう側になることは一度もなかったのだから。
しかし、彼女の強く輝かしい瞳。
嬉しそうに語るその姿。
未来をしっかり見つめる姿勢。
それらすべてが羨ましくて、無欲の俺が、全てを持つはずの俺が「欲しい」とすら思ってしまうもので。
「…………じゃあ、教えてくれないか」
自分の口から自然とこぼれだした言葉は、そんな小さくも情けない言葉だった。
赤い瞳がこちらに首を傾げて覗き込む。
「俺が持っていないものを君は持っている。
…………だから、夢も、恋も、欲も全て
俺に教えてくれないか、A。」
今まで無欲だった俺の中に秘められた欲は、大きくそして熱い。
彼女に依存し、彼女の全てを欲するまで、あと__________。
____その傷は愛の証END____
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鎖月零(プロフ) - Flower*さん» flower!ありがとうございます!!短編の夢主は同じ夢主で書くのが普通だということを今の今まで知らなくて……全員バラバラにしてしまいました(笑)私も短編の方が書きやすくて軽くかけるので楽しかったです!続編頑張ります! (2018年2月26日 18時) (レス) id: e5c976073b (このIDを非表示/違反報告)
Flower*(プロフ) - 1完結(?)おめでとうございます!甘々で読んでてドキドキしてしまいました(*ノωノ) それぞれのお話の夢主ちゃんたちも個性豊かで面白し、何より短編なので読みやすいです。やっぱり零すごい……。続編の方も首を長くして待ってます! (2018年2月24日 0時) (レス) id: 4d95f4e8a2 (このIDを非表示/違反報告)
黛パフェ(プロフ) - 鎖月零さん» めっちゃ楽しみにしてます!!! (2018年2月18日 18時) (レス) id: d3f83fb575 (このIDを非表示/違反報告)
鎖月零(プロフ) - 黛パフェさん» うそぉ……本当に恥ずかしいです(笑)規制かかる系の甘々はあまり得意分野ではないのですが、楽しんでいただけると幸いです……!甘くなるように頑張ります (2018年2月18日 18時) (レス) id: a33d034fdf (このIDを非表示/違反報告)
黛パフェ(プロフ) - 鎖月零さん» 今でもたまに見たりしますよ!黄瀬くんの好きですー!規制とかあまり気にしないタイプなので別のアカウントで見に行きますねー! (2018年2月18日 1時) (レス) id: d3f83fb575 (このIDを非表示/違反報告)
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