ただずっといちゃいちゃしてるだけ【黒子のバスケ】

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起承転結で一番大事な部分であろう、「承」と「転」をすっ飛ばしてお伝えすると、

結局、俺が折れた。


折れたと言っても、別にアイツの押しに負けたわけではない。

いくら突き放しても塩対応をしても、「俺は運命の王子様じゃない」と何度も何度も伝えても、絶対に意見を曲げずに一途に俺に愛を伝えてきたアイツに、揺らがないわけがないだろう。

その上、俺にだけ時折見せる迷子の子供のような顔とか、あまりにも俺が「赤司を好きになれば」というからか泣きながらブちぎれた時に飛び出した俺へのあふれんばかりの気持ち。


もちろんその他諸々。俺はアイツを好きにならない理由がないほどまで愛情を捧げられ、傍で支えられてきた。好きにならないはずがない。むしろ今までずっとアイツの幸せを第一にと赤司と付き合うようにと根回ししていた自分に拍手だ。

きっとその時からアイツが好きで好きで仕方なかったのだと、今ではわかるが。でなければあんなに心が傷つくのをわかっていながらも、アイツの幸せを、だなんて言葉は発せられない。





＿＿＿＿まぁ、今では、アイツの隣は俺ではないと幸せじゃないってわかってはいるが。






そんな、お姫様と村人Aが付き合うという、歪すぎるハッピーエンドを迎えた後。

俺と彼女は世間一般でいう「カップル」となり、お付き合いを始めていた。
大学生になり、一人暮らしを始めた俺の家に、時折くる制服姿のA。


今日もまた合鍵をもって俺の家に来ていたようで、俺がバイトを終え夜遅くに帰ってくると、家の明かりがついていた。



「あ、千尋先輩。おかえりなさいっ！」



高校1年の時からため息がでそうになるくらいの美少女だったくせに、またさらに磨きがかかっている。サラサラふわふわの髪。顔立ちは少しずつ大人っぽくなり、色気もましていく。

そんな彼女は玄関先で俺を迎え入れると、通せんぼするように目の前に仁王立ちで立った。

可愛らしいピンク色のエプロンを揺らし、にっこりと笑顔をこちらによこす。



「先輩っお風呂にします？ご飯にします？それとも＿＿＿＿」


「馬鹿言ってないで、上がらせてくれ。」


「最後まで言わせてくださいよぉーっ！」



ふぇーん、とわざとらしい泣きまねをし始めた彼女は、「それとも＿＿」からの言葉を切り、数歩下がる。

いつまでたっても押しが強い＿＿＿＿＿＿＿ように見えるが。



ほんの少しだけ俺から距離を置いている彼女に気づかないほど、俺は馬鹿じゃなかった。

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