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「合言葉なんて無駄ですよ。すでにブラックスターは私の手の中だ」
笑い声と共に会場の隅の壁に白いマントにシルクハットをかぶる彼はいた。手にはブラックスターの様な黒い宝石を持っている。その姿に中森は驚きの声を上げた。
「き、キッドぉ!?」
「おやおや、困った泥棒さんだこと…ああいう悪戯坊主にはお仕置きしてあげなくっちゃ」
「え…?」
バァンと銃声が船内に響いた。園子の母、朋子が手にしている銃から小さな煙が出て壁にいた彼の胸元をそれは貫いていた。
ひらひらとマントがはためき下に落ちた彼はテーブルの上に仰向けになっていた。
「「きゃぁぁ!!」」「えっ!!」
「…茜、大丈夫だ!」
「わかってる!声が違っでも…こんな…」
会場にいた婦人たちも人が拳銃で撃たれて倒れたと死んでしまったと思い込み茜同様叫び声をあげ、近くにいた男性たちはパニックになった女性や他の人たちが近寄らない様に自分の身体を使ってガードしていた。
葵は少し顔を顰めながら見ない様にしゃがみ込んだ茜を介抱する。
「あんた、なんてことを…」
「心配ご無用ですわ、刑事さん。だって彼はまだ生きてますもの。」
「えぇ?」
自身気に朋子はモデルガンで撃たれたふりをした彼真田をガードマンが受け止めてるから大丈夫と言い放つ。
それには招待した人たちのことを考えてない様な気がして茜はただでさえ何故か気分が悪いのにさらに悪化していた。
「朋子さん、鈴木財閥としても、一個人としても、少々品位に欠けると思いますよ」
「!!あなたは…」
「それを楽しめないレディも多いでしょう。今一度考えてみては?」
自分だけが楽しいパフォーマンスはいかがかと思いますよ、と珍しく葵が怒っていた。彼はそれを顔には出さずに最高のパフォーマンスをやってのけたと自身満々な朋子に小さな声で伝えると気分が悪くなった茜を連れて会場を出て行こうとドアの方へ歩き出した。
「コナン君。悪いけど茜を休ませてくるよ。」
「あ、あぁ…」
「茜、顔が赤かったね。大丈夫かな」
近くにいた蘭にも聞こえる様にコナンに言うとそのまま2人はドアから出て行った。
「葵兄ちゃんいるし、大丈夫だよ。きっと」
「そう、だよね…」

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作者名:唯星 | 作成日時:2024年5月9日 9時