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杏寿郎が酔いを自覚してからは早かった。
暑い暑いと言って着物を脱ぎだし、それを止めようとAが手を掴むと、今度はAが冷たくて気持ちいいと言って苦しいほどにAを抱きすくめて離さなくなった。
「〜あの、杏寿郎さん…?」
「ふはは、以前より抱き心地が良くなったなぁ」
普通に酔っているとしか思えない杏寿郎に、やはりただの度数の強いお酒だったのか、とAが落胆したとき、何の前触れもなく大きくて温かな手が己の胸を包み込んで、Aは思わず身体を固くしてしまう。
「…ん、ここも大きくなった」
もにゅもにゅと、ただ感触を楽しんでいるだけにも思える杏寿郎の手つきに、Aはあくまで自分は"性"の対象ではないのだと悲しくなってしまう。
「…杏寿郎さんが、美味しいご飯をもっと食べろと沢山くださるので、すっかり太ってしまいました」
「まだ全然足りない。ここも、ここも…」
そう言ってお腹、腰、太ももと滑っていく熱い杏寿郎の手のひらが太ももの裏で止まったかと思うと、杏寿郎はそのまま勢いよくAを横抱きにする。
「えっ、杏寿郎さん!?」
「…俺は今、相当に酔っているらしい!」
「え?」
「いつもなら問題なく律せるものが、今はとても我慢できそうにない!」
そう言いながら杏寿郎の部屋に連れて行かれ布団にゆっくりと降ろされて、Aはようやく杏寿郎の言わんとしていることを理解する。
「え、えっ、」
「だが、無理強いは絶対にしたくない。…ので、…手を、お借りしてもいいだろうか」
そのまま手を掴まれ手のひらに固いものを押しつけられれば、Aは急に頭が真っ白になってしまって、慌てて手を引っ込めてしまう。
「申し訳ない。…申し訳ない。嫌なら、殴ってくれて構わない」
そう言って首筋を甘噛みされ内ももに熱いものを擦り付けられて、まるで自分を求めているかのような杏寿郎の仕草に、Aは呼吸もままならなくなって何も考えられなくなる。
「…A、」
もしかしたら私は、幸せな夢を見ているのかもしれない。
杏寿郎に与えられる全てのことに神経を研ぎ澄ませながら、頭の片隅ではどこか冷静にそんなことを考えるAは、明日の朝、目が覚めて夢でなかったことを確認するまでは何も考えないでおこう、と杏寿郎の熱い背中にゆっくりと手を回した。
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チーズ(プロフ) - みゆさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!期待に添えるように頑張りますので、よろしくお願いしますm(__)m (2020年11月5日 18時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - よもぉぎさん» コメントありがとうございます!無限列車に乗車したんですね!私まだなんですー!煉獄さん現実に来て欲しいですよね、、更新頑張りますのでよろしくお願いします! (2020年11月5日 18時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
みゆ - 読ませていただきました!!煉獄さんがイケメン過ぎるし千寿郎は可愛くて お話が更新されるのを楽しみにしてます(*´ω`*)更新大変だと思いますが、無理せず頑張ってください☆ (2020年11月4日 8時) (レス) id: 010b0b49eb (このIDを非表示/違反報告)
よもぉぎ(プロフ) - はわぁ...素敵すぎます〜!!煉獄さんから愛されるなんて話数を積む事ににやけが増していきます!!無限列車にも乗車したんですがどれほど煉獄さんが現実にいたらと思ったんだろう。。更新頑張ってくださいー!!! (2020年11月4日 7時) (レス) id: 990295e7ae (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - パプピーマン。さん» コメントありがとうございます!好きすぎるだなんて嬉しいです!口角が富士山!言い回しが上手すぎて思わずクスッと笑ってしまいました、、!!関係ないですけど、今の季節の富士山はめちゃくちゃ綺麗ですよね〜(笑)更新頑張りますのでよろしくお願いします! (2020年10月30日 11時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チーズ | 作成日時:2020年10月8日 14時