ランギルス・ヴォード ページ15
10年前。
定期的に下級の貴族が王城に集まり、王族の権威にあやかろうとおべっかを使いに来る時があった。
僕の家であるヴォード家も、代々受け継ぐ強力な空間魔法を見せるのを目的に僕を連れて参加していた。
下級貴族の中には、まだ5歳かそこらだったミモザ・ヴァーミリオンやレオポルド・ヴァーミリオンに媚を売る者もいた。
一言で言えば暇だった。
空間魔法を見せると言えどそれをするのは主に父だったし、父と母は僕を置いて別の場所にいた。
わざわざそこに行く理由もない。
そんな中ひとつの小さな悲鳴が人混みの中で僅かに聞こえた。
聞こえた方を見ると、何かにつまづいたミモザ・ヴァーミリオンが膝をついていた。
媚を売る目的の人達は下心丸出しのまま手を差し伸べようとした。
貼り付いた笑みを浮かべる者達がいる中、ミモザはある人物を前に目を見開いた。
「立てますか？」
透き通った声の持ち主は、ミモザより少し上で僕と変わらないくらいの少女だった。
薄い金髪に淡い青の瞳。
ミモザがいたのもあったが、その容姿は周りにいる人間の目を引いた。
小さく返事をしたミモザは、差し伸べられた彼女の手を掴み立ち上がった。
それを見た貴族達の中には、気にくわないように顔を顰める者がいた。
が、ミモザは立ち上がった瞬間に顔を歪めた。
彼女の目線の先を見ると、ミモザの足が少し擦りむいて赤くなっていた。
おそらく先程転んだ時になったのだろう。
周りがどよめく中、彼女だけは静かだった。
「大丈夫ですよ」
安心させるように柔らかく笑った彼女はミモザの視線に合わせてしゃがむと、赤くなった足に手をかざした。
その瞬間、2人を中心に穏やかな風が吹いた。
反射的にほとんど全員が目を瞑ると、目を開けた時にはミモザの足の赤みは消えていた。
……回復魔法か。
「痛くありませんか？」
「！はい！ありがとうございます」
嬉しそうに手を振って行ったミモザ。
1人ぽつんと残った彼女も踵を返したと思えば、貴族の誰かがわざとらしく呟いたのが聞こえた。
「あの者は……元下民の者では？」
「ああ…数年前にどこかの家の養子になったとか」
「先程ミモザ様を転ばせたのはあの者では？自分の回復魔法を見せつける為に」
少なくとも良い話は聞こえなかった。
でも僕にとってそんなことはどうでもいい。
＿＿＿あの笑顔を崩したい。
母親譲りの歪んだこの性格は、兄以外初めて他人に向けた。
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HANON(プロフ) - Ame931さん» ほんとそれですね！コメントありがとうございます (2022年6月19日 12時) (
レス) @page36 id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)
Ame931(プロフ) - ゴーシュが恋愛やってるように見えないのめっちゃ分かるわ〜 (2022年6月19日 9時) (レス) @page36 id: 745f3a4c41 (このIDを非表示/違反報告)
春川みやび(プロフ) - ありがとうございます（ ; ; ）後回しで構いません！無理しないでください、、！応援しています！^ ^ (2019年2月16日 13時) (レス) id: 1c145295b7 (このIDを非表示/違反報告)
HANON(プロフ) - 春川みやびさん» リクエストの方なんですが、今書いてもご期待に添えられるようなお話にはならないと思うので、続編に入って最初の方は本編を書かせていただきます。本編が一区切りついたら番外編を書こうと思うのでもうしばらく待って頂けると幸いです。大変申し訳ありません。 (2019年2月15日 20時) (レス) id: 10bafabdf4 (このIDを非表示/違反報告)
シルバーウルフ - ありがとうございますo(^o^)o自分でリクエストしながら、すっかり忘れてました、、、、。(笑)m(__)m (2019年1月22日 19時) (レス) id: 769a4deb70 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：HANON | 作成日時：2018年10月8日 16時
