Only you . (ページ13)

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「美味しい～！これなんて料理？」

「………」

「……A～」

「………ん？ごめん、何？」

なんでもない、と少ししゅんとしてユーキが答えた。……このしゅんとして俯く姿が、クロと重なる。

「……プリン、買ってあるから後で食べて」

「プリン？ほんと？」

彼はころころと表情が変わる。本当に小さい子みたいだ。…私の事情で気使わせるのも悪いよな、と今更になって思う。思えば私が落ち込んだりしてる時、彼はどんな気分で私と同じ空間でいたんだろう…

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お風呂から上がるとユーキは私のベッドを占領し毛布にくるまっていた。目閉じてるし寝てるのかな…。まつ毛長いな。

なんとなく気分でベランダに出ると冷たい風が吹いた。身体も濡れたままの髪も冷えていく。

「はあー……」

柵に手を置きぼーっと空を見上げる。私はどうしたらいいのだろう。海を許すのか、許さないのか、もし許さないとしたら、その先は……別れる…？

「何してるの？」

「わっ、」

物思いに耽っていると突然後ろから温もりに包まれた。ユーキが使っていた毛布にそのまま後ろから包まれ、２人で１枚の毛布にくるまる。

「髪濡れてる～風邪ひいちゃうよ」

「…うん、」

「……考え事？」

「…うーん……そんなとこ」

「………ねえA、僕はね、Aには笑ってて欲しいの」

やけに落ち着いたトーンの声。耳元で囁くように言われるのは未だに慣れない。

「Aには絶対に幸せになってほしいから……」

そう言うと、もう一度私をぎゅっと抱き締め直して。

幸せになる、か。……そうなるはずだったのにな。

あの日私があの場面に遭遇していなかったら、海の家に行っていなかったら。

あの事実を知る事なく、ある意味幸せに暮らしていたのだろうか。知らない方が幸せだった事実って、まさにこの事なのかな。

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