【tkrv】梵天と解体屋 (ページ9)

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怒り狂う解体屋 2 ページ9

「やけに静かだな」

三途が先に行った割にビル内はやけに静かだった。
錆びた扉を開ければ扉の前で棒立ちになる三途の背中がすぐにあった。

「どうした？三途…」

俺が後ろから覗き込んだ瞬間、見なければよかったと後悔した。

いつも着ている白いスーツと灰色のネクタイをきちんと締めたAが赤く染まっている。

それがAの血ではないことなんて目に見えてわかった。

辺りに転がっている人間の目や耳、指などが切り落とされていたり向かない方向に向いているからだ。

それをしたであろう、Aは静かに鉄パイプの椅子にだらしなく座り込んでいる。

夕焼けが照らす室内は日のせいの赤さなのか、はたまた転がっている人間の血なのか分からなかった。

「ｯﾁ…遅かった」

ようやく動き出す三途は周りに目もくれずAに駆け寄る。

それに続いて俺も近寄れば、俺たちに気づいたのか黙って顔を上げたA。

思わず息を飲んだ。

冷たく生気のないその瞳に俺たちを映した。

「A…遅くなって、ごめんなｧ」

「……」

泣きそうになりながら三途はAの顔に付いた血を自分のシャツで拭き取りながら呼びかけている。

血を拭き取られても、乱れだ髪を直されても瞬きひとつしない姿はまるで電池の切れた人形、と言う言葉がピッタリだった。

「A…頼む…喋ってくれ春ちゃんだぞ……なァ」

遂にメンタルブレイクしてしまった三途がヤク切れの時みたいにグズグズとAに擦り寄っている。

Aに一体何があったんだ。
見る限りやはりスーツに付着した血は返り血のみだった。

怪我をしている訳では無かったようで少し安心をする。

・
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「…春千代」

「A！……どうした？何があったんだ？俺に…教えてくれるか？」

いつも春ちゃんと呼ぶ声とうってかわり、静かに口を開くAの声は、水分を失っているのか少し掠れているようだった。

その返事を今まで聞いたことの無い、優しい声でAに問いかける三途。