叡智の門は開かれない_2 (ページ10)

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キーを回せページ10

「完全に分断されましたね」
「すみません、せっかくトーマンさんが本拠地の情報を掴んできたのに――」
　いや、とトーマンは片手を上げた。彼らの背後には切り立った崖、正面には一本道がある。この先を進めば、本隊と合流できるはずだ。そうすれば、先ほどトーマンが女から仕入れた協会の本拠地の情報を基に攻め、この戦いを終わらせることができる。言わば王手の状態。――しかし、その「王手」から、彼らは一歩として動くことができなかった。
　試みに、彼の隣にいた者が一歩前進した――が、しかし即座に一歩下がって体を屈める。
「危ないですよ！やめましょうそういうことするの」
　そう上がった声の通り。先ほどまで彼の足があった場所を何かが通過する残像が見え、今の彼の足元の地面に銃弾が突き刺さる。
「でも、やれませんかね？さっきから動けば弾が飛んできますが、あくまで牽制程度。主力部隊があるようにも思えませんし。あるいは、突破くらいなら――」
「いや、やめておこう。……優秀な狙撃手が一人いれば、集団を分断させるのは容易いと聞く」
　今度はトーマンが一歩踏み出した。
　すると、今度彼の足元へ飛んできたのは銃弾、ではなく一本の矢だった。予想外のものに驚いて目を見開きつつ、トーマンはその矢を引き抜き、その場に跪いてまじまじと見た。
「――いや」
　諦めたように、もしくは何かを覚悟するように一つ、長いため息を彼は吐いた。
「そう焦る必要はない。……おそらく先に、向こうの限界が来るさ」

この場に限って運命と呼ぶ→←＊