甘い誕生日 (JUMP短編集)

Happy Birthday Yuri！(2) ページ28

「やっぱり、誕生日の日は忙しいよね？」


海外の仕事が終わった侑李との久しぶの逢瀬。


それなのに、やっぱりその日もゲームに夢中な彼。


そんな彼に伺うように訊ねた声は思ったよりも小さくなってしまった。


私のいつもと違う様子に珍しく画面から顔を上げて私を見てくれる侑李。


続けて何か言ってくれるのかと思って、じっと待っていても彼の黒目がちな瞳は私を映すばかり。



「ほら、侑李の誕生日だから少しだけでも会いたいなって。

あっ、でも次の日からまた忙しいんだよね？

だから無理にとは言わないけど……。」


慌てて理由を話すと少しだけ瞳が揺らいだ彼が口を開く。


「Aさんが会いたいならそれに合わせるけど。」


「そっか……。」


私の意志に委ねられてしまい戸惑った声を出せば、難しそうな顔を向けられる。


「そんな顔するなら会おうよ。」

「え？」



私の要領を得ない返しに焦れったそうな顔になる。




「誕生日、別に僕はどっちでもいいけどAさんがそんな悲しそうな顔するなら会ってもいいかなって。

でも特別なことしないで普段と同じように過ごしたいな。」



「そっか、ありがとう侑李。」







そして迎えた彼の誕生日。


言葉通り私達はいつもと同じ時間を過ごしている。








やっぱり、今日は会わない方がよかったのかな……。




彼のドライな態度と言葉を思い出してツキンと痛む胸。


いつもと同じはずなのに、最近彼とは会える回数が少ないせいかその態度に不安になってしまう。


そんな気持ちを伝えられずに隣に座る彼を見てみると未だにゲームに夢中な様子。

胸に募るモヤモヤ。


「私、先に寝るから侑李も遅くならないようにね。」

「え？ Aさん？」


立ち上がり早々とリビングの扉へ向いながら放った一言。


聞こえる戸惑いの声。


いつもならお泊りの日は一緒のタイミングで寝室に行く私達。


でも、今日はこれ以上一緒に居ても仕方ない気がしてそのいつもを破ってしまう。





パタリと後ろ手で扉を締めて入る寝室。


暗がりのまま、ベッドに飛び込めば、途端にさっきの自分の行動に胸がぎゅっとなる。


明日から侑李とはまた会えない日々が続いちゃうのに。


気まずい空気にしてしまったことへの後悔。


明日の朝、どう顔を合わせようか考えていると廊下からパタパタと歩く忙しない足音が近づいてくる。

それが止み、瞬間緊張に支配される。



扉の開く音のあと、侑李の気配を感じる。

Happy Birthday Yuri！(3)→←Happy Birthday Yuri！(1)

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す