悪霊退散 ページ15
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このひとは、たぶん、わたしなんか比でもないほどの途方のないなにかを抱えて生きていたのだろう。
可哀想なひと。
世界に嘆くことしかできず、死ぬこともできずに終わりのないはじまりを迎え、今もずっと這いつくばっている____________
「同情なんかいらんで」
「わかってる」
「まあ、今のおれは世界になんて興味な……」
ふいに死神が見開いた目に、わたしの顔が映る。
わたしは彼にキスをした。
首を傾けて、押しつけるようにそっと。
死神の唇はつめたかった。
つめたくて、やわらかくて、すこしだけ濡れていた。
「え・・・・・は？」
ぼうぜんと固まる彼は、
でもなにか特別なことが起きるようすはなくて。
「なにも変わんないじゃん」
「え？ちょお待って・・・・・なに？」
「ここ」
文字をなぞるよう、紙の上に指先を滑らせる。
死神撃退法。
やけにポップな文面で書き綴られている。
「シニガミはキスで相手に魂を与えることができる、だから唇を奪えば彼らは消滅する・・・って」
「はあ！？そんなわけないやろ！！」
「なんだ、嘘なのか」
「嘘ちゃうけど、こんなヘッタクソなキスでどうにかなる問題でもないし！！
てか今のでおれが死んでたらどうしてくれんねん！？」
うるさいなあ。
わたしは両手で耳を塞ぎ、ぎゃあぎゃあ騒ぐ死神を一瞥する。
「仕方ないじゃん。はじめてだったんだから」
「は？」
目を丸くして、また、きょとん。
「え？さっきのファーストキス？」
「そうだけど」
「まじで言うてんの？」
そんな反応をされると今さら恥ずかしくなる。
キスの相手にこだわりはないし、べつに深い意味なんてないのに。
「ははーん、お前ほんまにおれのこと好きやな」
「うん、消そうとしたんだけどね？」
さっき大騒ぎしてたじゃん。
「悪霊退散みたいなもんだよね。結局退散できなかったけど」
「おい！！悪霊といっしょにすんなや」
「おなじじゃないの？」
「あいつらには理性がないねん。おなじちゃうわ、ばーか」
ほんとうは、
すこしだけどきどきしていた。
まるで掘り起こした宝箱を開けるときみたいに。
だけど、自分からしたキスに緊張しているなんてかっこわるいから、あくまで平静を装っていた。
きっと死神にはきこえちゃってるだろうけど、
でも、彼がなにも言わずにいてくれたから、わたしはどうにか自分を保つことができた。
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眞光弓眸 - バレンタインらしい、とってもいい小説でした！ (2018年3月14日 21時) (
レス) id: f707b6af10 (このIDを非表示/違反報告)
べに(プロフ) - 安紀子さん» 安紀子さん、はじめまして！こちらこそ、読んでいただいてありがとうございました！何かすこしでも届けられたものがあったなら幸いです！(^^) (2018年2月15日 23時) (レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
べに(プロフ) - 安田ヨココさん» 安田ヨココさん、はじめまして！読んでくださってありがとうございます！そんなふうに言っていただけてうれしいです！おまけ、書き上がったら更新しますね(^^) (2018年2月15日 23時) (レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
安紀子(プロフ) - 初めまして(^^) 素敵な作品をありがとうございました。読み終えて、何だか暖かい気持ちになりました(*´ω｀*) (2018年2月15日 14時) (レス) id: 5200fb55a9 (このIDを非表示/違反報告)
安田ヨココ(プロフ) - べにさんの小説をはじめて読ませて頂きました。しょうたくんが涙を流す場面がとても心に打たれました！！！最後、再会ですかね！よければおまけ的なのをかいてほしいです^ ^ (2018年2月15日 8時) (レス) id: d4fbe2e5a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：べに
| 作成日時：2018年2月14日 0時
