ふたりは運命共同体 ページ11
.
死神は言った。
「運命共同体ってきいたことある?」
なんだか急に大きなはなしになったな。
わたしは首をかしげ、なんとなく、と答える。
「まあ、言葉の意味くらいはわかるやろ」
「うん」
「お前としぶやんはそれやねん」
彼はそう言ったきり、すこしの間沈黙する。
一点を見つめ、どうやら頭で説明の組み立てをおこなっているようだった。
わたしは黙って彼の口が開くのを待った。
「たとえば目に見える例で言うたら、双子とかがそうなんやけど。人間には、一人一人必ず、共同体となり得る対の個体が存在すんねん。
運命ってもんが糸みたいなもんやとすれば、それが直接的につながってるもん同士ってことやな。
それは異性やったり同性やったり、まあ、ほんまに人それぞれで。
恋人ってこともあれば親友ってのもあるし、赤の他人ってこともある。聞いたはなしによると、成人までに出逢ってる場合がほとんどらしい」
難しいはなしだ。
しゃべっている本人も、そんな顔をしている。
わたしの心の声に気づいたのか、彼はつくろうように咳払いをした。
「いずれにせよお前らの岐路はつながってんねん。絶対に切れへん糸で・・・だから良い方にも悪い方にも互いを引っ張り合えるし、生き死になんか、おれらからしたらカンタンに操作できる」
すばると、運命共同体。
正直、とてもしっくりとくる。
彼がわたしをあいしてくれていることには気づいていた。
だけどわたしは、恋愛とか友情とかそういう次元のものではない、もっともっと深い場所で彼とはつながっていると、そう感じていたのだ。ずっと前から。
だが、ならばどうして。
死神は、わたしに自分自身と彼との命を選ばせるような真似をしているのか。
「人間って、脆いもんやで」
ふいに、ぽつりと、死神がつぶやいた。
「運命がどうや愛がどうやなんて、結局、死への恐怖には敵わへん」
なんだろう。
胸がすこしざわついた。
これは、死神の感情なんだろうか。
「じゃあさ」
「まだあるんかい」
「うん、死神が元人間だっていうのは……」
そこまで言いかけて、近づいてくる足音に気づく。
向こうから、亮が手を振りながら駆けてきた。
話は中断され、わたしは胸にいくつかのもやもやを残したまま、一日を過ごす。
329人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
眞光弓眸 - バレンタインらしい、とってもいい小説でした! (2018年3月14日 21時) (レス) id: f707b6af10 (このIDを非表示/違反報告)
べに(プロフ) - 安紀子さん» 安紀子さん、はじめまして!こちらこそ、読んでいただいてありがとうございました!何かすこしでも届けられたものがあったなら幸いです!(^^) (2018年2月15日 23時) (レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
べに(プロフ) - 安田ヨココさん» 安田ヨココさん、はじめまして!読んでくださってありがとうございます!そんなふうに言っていただけてうれしいです!おまけ、書き上がったら更新しますね(^^) (2018年2月15日 23時) (レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
安紀子(プロフ) - 初めまして(^^) 素敵な作品をありがとうございました。読み終えて、何だか暖かい気持ちになりました(*´ω`*) (2018年2月15日 14時) (レス) id: 5200fb55a9 (このIDを非表示/違反報告)
安田ヨココ(プロフ) - べにさんの小説をはじめて読ませて頂きました。しょうたくんが涙を流す場面がとても心に打たれました!!!最後、再会ですかね!よければおまけ的なのをかいてほしいです^ ^ (2018年2月15日 8時) (レス) id: d4fbe2e5a6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:べに | 作成日時:2018年2月14日 0時