あの傭兵に妹がいたようで【第五人格】 (ページ42)

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『そうですか。分かりました。お気になさらず』

「アンタも早く寝るんだぞ。な、何が出るか分からないからな！」

〔お先に失礼します〕

ブロンドとアルビノの青年に気絶した少年が引っ張られて行く。
僕は目を細めて手を振った。

ただオカリナを吹いていただけでこんなにも怖がられてしまうとは。

『あの3人…パーティーでは見かけなかったな…？』

1人は筆談、1人はアルビノ、1人は電気を体から発して…
さっきの子に関しては軍からしたら格好の実験材料となるだろう。

屋根のある場所からまた夜空の下に出る。

月光と星が煌めく。
軍は明るすぎて星すら見えなかった。見る余裕すら無かったけれど。

消灯を過ぎたら何か出るのだろうか。

「こんな所で何をしていらっしゃるの？」

さっそく誰かが来たようだ。声からして女性。

『満天の星空を眺めているのです。貴方もどうです？』

「ご一緒させてもらうわ」

ヒールの音軽やかに僕の隣で止まる。
チラリと横を見た僕はサッと血の気が引いた。

何故ならその女性は

首から上が

消失していたから。

平静を装ってまた話しかける。

「私は血の女王、ハンターをやらせてもらっているの」

『僕は衛生兵、サバイバーです。メディックとお呼び下さい』

「私はマリーよ。よろしくね、軍人さん」

ドレスの裾を持ち上げて美しくお辞儀をする。
顔があったらもっと美しかっただろうに。

どうやら声は首の上、僕には見えない空間から出ているようだった。
彼女からしたら普通に顔があるのだろう。

なんて恐ろしい場所なんだ。人の印象を変えてしまうとは。

『赤い雫が陛下のお召し物を濡らしています。着替えられては如何です？』

「面白い子ね。このドレスは私の血で染められた物なのよ。斬られた時にね…」

この人の生きていた時代の斬るはきっとギロチンだ。多分。

「ねぇ、貴方には私がどう見えていらっしゃるの？」

『民の上でいつまでも輝き続けられる様な高貴なお方がこの目に』

何も言わない。
何かマズい事を吐いたか？

「嬉しい事を言ってくれるのね。気に入ったわ」

でも試合では容赦しないわよ。と笑う。
見えないけれど。

『夜遅くまで起きていては体に毒ですよ』

「貴方もね。早く試合で会えるのを楽しみにしているわ」

赤が僕の手を染める。

奏者のいないオカリナが低く嘶いた。