運命のヒト【さとみ】

初めての朝 ページ29

優しい香りがする。

ふんわりとした微睡みの中、
そう感じた。

手が肌に触れている。

ゆっくりと瞳を開くと
Aさんの背中が見えた。

白い肩に髪が流れていて、綺麗。

朝日を浴びて輝いているように見える。

そっか、昨日…

抱いたんだ…

さとみ「…」

覚えているのは、

カシス味のキスと
熱っぽい吐息と

ただひたすらに甘かったことだけ。

酔ってたからか、夢中だったからか、

それはわからない。

Aさんの寝息を聞いて
やっと実感が湧いた。

途端、一気に愛しさが増して、

触れたくなった。

いい…かな…？

俺は頭の隅に罪悪感を置いておきながら
Aさんの背中を抱きしめた。

きめ細かい肌がぴったりとひっつく。

…暖かい。

ふとサイドテーブルに目をやる。

俺の腕時計の隣に、Aさんの指輪が置いてある。

互いの私物が並んでいることが嬉しい。

…それよりも、今のAさんは
男の女(もの)じゃないということが嬉しい。

A「ん、ん…」

ぴくりと肩を動かすAさん。

A「……あ…」
さとみ「おはよ」

少しこちらに振り向いて
照れたように目を伏せた。

A「おはよ…っ」

俺、こんなに幸せでいいのかなあ…

だって、こんなに素敵な人と
一晩を共に過ごせて…

一緒に朝を迎えられたんだから。

朝に見るAさんは新鮮で
どこか儚い感じがする。

俺は顔をAさんの首元に埋めた。

A「くすぐったい…w」
さとみ「んーw」

髪、すげぇいい匂い。

さとみ「あ、」
A「ん？」

Aさんの首筋に
紅い印を発見。

さとみ「…ふっw」
A「なんで笑ってるの！」

これが俺の宣戦布告。

さぁて、相手はどう出るか。

Aさんにバレない程度に、
軽く唇を触れる。

A「……さとみくんって、」

もうすっかり"さとみくん"。

A「…えっちだね…//」
さとみ「は？！w」

手で顔を隠して言うAさん。

俺がえっちって！何だよ！いつバレた？！！

さとみ「え、何だよ。顔見せて」
A「やだ…っ」
さとみ「見せて」

俺はAさんに跨って手を解かせる。

俺の力には敵わないみたいで、
すっかり手の力を抜いたAさん。

見事に真っ赤な顔。

酔ってないAさんの赤い顔見るの、初めて。

すげぇ新鮮。

あまり顔に出ないと思ってたけど、
こうやってみたらころころ表情変わってるなあ。

A「恥ずかしい〜〜//」

必死に顔を背けるAさん。

俺はじっと見つめ続ける。

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