運命のヒト【さとみ】

待ち合わせ ページ11

ケータイが振動する。

LINEの通知が来たらしい。

俺は表示された名前を見て
思わずケータイを落としそうになる。

Aさんだった。

俺は一瞬で既読をつけそうになる手を抑え、
少しだけ考える。

Aさんが得意そうな
駆け引き、ってやつをやってみよう。

少しだけ既読つけるの遅らせよう。


一通り作業を終わらせて
ケータイを開く。

さとみ「…ふぅ」

深呼吸してLINEを見る。

Aさとみさん!!

かわいい。

あ、でもちょっと待って。

俺LINEの名前本名にしてる…

…まあ、いっか。

珍しい名前だって印象に残るだろ。

さとみさとみです笑

一瞬で既読がつく。

あれ、駆け引きしないの。俺の考えすぎか。

Aいつにしましょう?

文字の最後に乾杯している絵文字がつけられている。

さとみ土曜日とか

日曜日は公式生放送あるからな。

A土曜日の夜ですね、了解です!

オッケーってスタンプも一緒に送られてくる。

かわいい。

さとみ「ふっ…w」

思わず笑みが溢れる。

土曜日の夜か、
響きがえろいな。

別にナニかあるわけじゃないけど。


ゆっくりとやってきた土曜日の夜。

俺は久しぶりに気合を入れて髪をセットする。

ライブとかイベントの時並みに。

何度も鏡の前でチェックを重ねる。

香水きつすぎないか？大丈夫？

自分の匂いってわかんねぇからな。

Aさんはいつもいい匂いだけど。

さとみ「俺、きもいな」

鏡の中の自分を見て言う。

期待してない癖に
ガッツリ落としに行ってんじゃん、俺。


送られてきた住所に向かう。

深い紺色の扉を引くと、
きらびやかな光が漏れる。

カウンターの前に綺麗な背中がひとつ。

ふわっと振り返り、微笑んだ。

A「こんばんは」
さとみ「こんばんは」

スーツじゃなくて営業ドレスのような格好。

髪も綺麗に結っている。

俺はAさんの隣に座る。

さとみ「綺麗な店だね」
A「でしょう？」

頬杖をついてこちらを見るAさん。

手首にはブレスレットが光っている。

さとみ「ジンフィズで」
A「私いつもの」

バーテンダーにお願いする。

"いつもの"。

何度も来たことがあるってことだ。

…誰と？

俺はモヤモヤしたまま
Aさんと仮のデートを始めた。

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待ち合わせ

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