憎しき彼に華を【神威】

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そうして待ちに待ったその日が来た。

大きなゴツイ艦に近づきながら神威とかいう腹立つ男の顔を思い浮かべてギリ、と歯を噛み締めた。



ーーーー私にあれだけの屈辱を与えたのだ。生かしておけるわけがない。



病院から脱走する際に足も無事に繋がり、折られた右腕もある程度動いてくれるようになった。



ーーーとなれば私の作戦は完璧である。


あらかじめ用意しておいたチャイナ服、そして顔を見せない程大きな番傘。つまりは“夜兎”を装って艦に忍び込む作戦なのだ。



不審な行動はとってはいけない。どこまでも自然に。そう、実家のマルチーズを散歩に連れて行っている感覚で……。





｢ーーーーあれ？お前…｣


『……っ、』


｢見ねぇ顔だな？新入りか？｣


『あ、あぁ！この前入団したばっかりなんだよ。ちゃんと新入りの顔は覚えといてもらわねーと』


｢悪ィ悪ィ！神威団長は誰これかまわず入れちまうから顔が一致しねェんだよ！｣





豪快に笑い飛ばす男が馬鹿でよかった、と心の中で安堵する。｢迷子になんなよ｣という忠告を軽く受け流して広い広いその艦の廊下の奥に向かう。





(ーーー第一関門、突破っ！)





軽く拳を作って緩む頬に耐える。ここを突破してしまえば後は私のものだ。あとは奴の息の根を止めるだけ。



なーんだ、案外簡単じゃないか。艦に入る前に身体検査とかあったらどうしようかと思っていたが、よくよく考えればこんなおぞましい風貌の艦に好き好んで侵入する奴なんてそうそういるものじゃないし。





『はっはっはっ！奴の命は我の手にあり！』


｢奴って誰？｣


『……えっ』





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