憎しき彼に華を【神威】

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『ーーーーっいだ、』




自分の声で目が覚めた。薄らと開けた視界はじんわりと涙で滲んでいたけれど、この殺風景な白い壁とか、所々に残る血痕とかで、此処が鍛錬場だと分かる。


働かない頭で数秒。

ーーーあぁ、そういえばさっきまであのアホ毛と闘っていたな、と。




(くっそ、……また仕損じた)




結局はその血で濡れる事は無かった手。服や肌に見られる赤が全て自分のものだと思うと、……やはりあの男、生かしてはおけない。


ボロボロの自分の体を見下して、痛む体で立ち上がろうと手を付けば、ズキッと痛みが走る。

先ほど蹴られた右腕からの痛み。そこは通常の倍に腫れ上がり、青く変色していた。ーーーどうやらこれは、何本か骨が逝ってしまっているらしい。




「あ、起きた？」


『うわだ！！』


「……何その声」




突如として部屋に響いたその声。咄嗟に折れた腕を隠した後に、何やらお団子を頬張るソイツを睨みつける。


相も変わらずニコニコニコニコニコと。何がそんなに面白いのか分からないけれど、奴が私に何か嫌味な事を言おうとしているのは、何となくわかる。




「地球人ってのは、ホントに脆いんだね。
鳩尾1発で撃沈するなんて」


『そう思うのならもう少し丁重に扱ってくれませんか。
せめて医務室まで運んでくれませんか、体中痛くて仕方ないんですけど、こんな硬い床に寝せられて！』


「お前がそこで勝手に寝始めたんだろ」

『主に貴方のせいなんですけどね！』




「さっさと殺されちゃくれませんか」と吐き出せば「実力不足だろ」と正論を返すアホ毛に何度目かの舌打ち。

ーーーすれば、神威はじっと私を見下ろして。




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