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百三十七話 眠り姫 ページ37

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太宰は前に出て、ふと振り返った。





「木の根を切り落とさないと。中也、短刀(ナイフ)貸して」



「あ?あぁ……ん?確か此処に……」


そう言って探し出す中也に、Aははぁと溜息を吐いて太宰を睨んだ


『人を比喩(からか)うのは程々にした方がいいですよ、太宰さん。貴方さっきスっていたでしょう』


そう言うと二人は目を見開き、Aを見る


「すごーいAちゃん。ほらほら蛞蝓君。そんなんだから君はいつまで経っても成長しないんだよ」


「手前なァ??」


太宰が中也の短刀を取り出し、中也は青筋を立てる。



それを気にすることなく太宰は久作の方へ歩き、短刀が届く距離まで来た。


「さて、やるか」


そうして彼が突き出したナイフは、久作の首筋へと添えられていた。


銀色の刃が、1cmも動かせば久作の喉を掻き切れる距離まで迫る。

中也とAは、無表情でそれを見据えていた


太宰は中也に視線を遣り、薄い笑みを浮かべる。





「……止めないの?」




「首領には生きて連れ帰れと命令されてる。だがこの距離じゃ手前のほうが早え。それに」





淡々と話していた中也が、ギュッと眉を寄せた。



彼の脳裏を過ぎるのは、ずらりと並べられた、成人男性一人が入る大きさの袋。



その中では、彼が従えていた部下達が永遠に醒めない眠りに就いていた。





「その餓鬼を見てると、詛いで死んだ部下達の死体袋が目の前をちらつきやがる。やれよ」



「そうかい。……じゃ、遠慮なく」





太宰がナイフを振り上げる。



ザッ、と鈍い音がした。



断ち切られたのは____葡萄の蔓だった。


Aはやっぱりと呟き、地面に目を向けた


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舞。(プロフ) - 心さん» ありがとうございます〜!!!更新頑張ります! (2019年11月17日 22時) (レス) id: 42a689ad41 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - とっても面白いです!続き楽しみにしてます! (2019年11月17日 21時) (レス) id: 2141c8a0fe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:舞。 | 作成日時:2019年11月12日 15時

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