Chocolate cosmos. (ページ10)

今日:2 hit、昨日:3 hit、合計:23,873 hit

寂しげな瞳ページ10

.

「·····初恋の·····人ですか？」

「そう、今日はその子の命日でお墓参りしに
行ってきたんやけどさ、」

「·····。」

「やっぱり、何年経っても寂しいもんやな」

アルコールのせいか、

夜空を見上げる先輩の瞳は少し潤んでいた。

びゅうっと、冷たい風が

私たちの体を冷やしていく

寒がりなのにも関わらず、この場から動けないのは

先輩の夜空を見上げる寂しげな瞳が

あまりにも綺麗だったから

「ごめんなんか、急にこんな重い話して」

「·····いえ、」

「洗濯物、取り込みに出たんやろ？
そんな格好じゃ冷えるから上着着てからにしぃ？」

「·····はい、そうします」

「ん、じゃあ俺戻るわ」

最後に先輩は悲しげな笑みを私に向けて

自分の部屋へと戻っていったけど

やっぱり私まだ、その場から動けずにいた

あんなに悲しく笑う人を

私は今まで見たことなかった。

そしてその表情が私の心までも

苦しくさせて

先輩が見つめていた夜空を私も見上げた時、
何故かぎゅっと心が締め付けられたんだ。

この感情をどう表現したらいいか
全くわからないけれど

とにかくこの日から私は、

悲しく笑う先輩が気になりだして仕方なかった。