29やよ ページ30
コネさんが喋る時は『』にします。
・
「…あのね、コネシマ」
『ん?何や?』
おれは歪んだ顔のまま、不機嫌そうに答える。
Aを見送った後、リビングで母さんと向き合い、話を聞く。
「…明日から、軍学校に行く事になったの」
やっぱり、あん時の話の通り。おれは“ぐんがっこー”に行かないといけないらしい。
それらしく演技をしておく。
『な、んで…?』
そう、若干涙目で質問してみると、母さんは一瞬、一瞬だけ今まで見たこともない、冷たい目をおれに向けた。
でもそれは直ぐに普通の目に戻った。
「コネシマもそろそろ、お国のために何かしなくちゃいけない年になったのよ」
『じゃあ、Aも一緒なん?』
「いいえ、A君はもうちょっと先。まだお国のために働けないからね、あの子は」
Aを侮辱したように聞こえ、腹が立った。おれは幼いながらも、母さんに向かって強く当たってしまった。
『何、それ?Aが弱いって言いたいん?Aはおれとおんなじくらい遊ぶし、体も弱くない。何があかんの?おれ、ひとりで“ぐんがっこー”行かなあかんの嫌や!!Aがおらんと嫌や!!!!』
そう反抗すると、母さんは、いや、女は立ち上がり、おれの頬を叩いた。
「いい加減にしなさいッ!同じ顔2人揃ってコネシマだのAだの…気味が悪いのよ!!私もうウンザリよ!!!
…早く支度しなさい。明日の朝、出発するわ」
女はおれを置いてリビングを後にした。
まだ、ほっぺはヒリヒリしている。
おれもトボトボと自分の部屋に向かい、要るものだけボストンバックに詰める。
2人で笑っている写真も一緒に。これは肌身離さず持っておきたい、そう思ったから。
もう、あの女には頼らないようにしよう。
使えない、要らない。
おれに“母親”なんてものは要らないんや。
おれは静かに目を閉じ、嫌な朝を待った。
ーー
「早く乗りなさい」
『…』
「乗りなさいよ!!」
『…』
おれは無言で、1人で馬車へと乗り込む。女が何故か見送りに来たのだが、正直もう要らない。
馬車の扉が閉まると、女は後ろを向いてそそくさとその場を去っていった。
…ほんまにクズやったな。おれの“母親”だった人。
もう、頼らんでええんや。やっと楽になれる。
『は、はは…う、A………ごめんなぁ…………』
馬車の席で、おれは独りで泣いた。
・
665人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みずがみ。2(プロフ) - ぜにがみさん» 有難うございます〜!! (2019年8月6日 19時) (レス) id: 679c2618a4 (このIDを非表示/違反報告)
ぜにがみ - 完結おめでとうございます〜。これからもみずがみ。さんを応援させていただきます〜。これからも頑張って下さい!!! (2019年8月6日 13時) (レス) id: 417a32e7b4 (このIDを非表示/違反報告)
みずがみ。2(プロフ) - しほさん» 有難うございます!! (2019年8月5日 22時) (レス) id: 679c2618a4 (このIDを非表示/違反報告)
しほ(プロフ) - 完結おめでとう御座います〜!密かに応援させて頂いてました。とても魅力的なお話、いつも有難う御座います。これからも楽しみにしています! (2019年8月5日 21時) (レス) id: 0d336d7836 (このIDを非表示/違反報告)
みずがみ。2(プロフ) - ゆきなさん» 有難う御座います! (2019年7月31日 7時) (レス) id: 679c2618a4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ