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「 A 」
憂鬱な学校。
「 こんなことは言いたくないが、お前、このままだと志望校落ちるぞ 」
模試の結果は最悪だった。
担任に呼び出しをくらって、落ち込んでいるところに来たのは
「 Aさん 」
話したことも無い、クラスメイト男の子。
名前は確か、
「 木岡くん、だっけ 」
「 そうだよ、酷いな〜忘れられてたのか 」
「 いや、ごめん、そういうわけじゃなくて 」
「 ううん、大丈夫、Aさんも進路？」
そう言う木岡くんもどうやら私と同じで、進路のことでで先生に呼び出されたらしい。
「 ちょっと、模試の結果が悪くて 」
「 俺も。このままだとヤバいって言われた 」
全く私と同じ状況だった彼は、志望校も私と同じらしい。
志望校別の勉強会を先生に勧められた私たちは、放課後にそこで勉強することになった。
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「 Aさん、もう勉強始めてんだ、偉いね 」
そんな生活が1ヶ月程続いた。
木岡くんは他にも友達がいるのに、決まって私の右に座る。
友達のいない、可哀想な奴だと同情してくれているのかもしれない。
……これはさすがに失礼か。
「 Aさん、帰ろっか 」
勉強が終わったあとも成り行きで一緒に帰ってくれる。
帰り道が驚くほど同じで、大我のところに行くに行けない日々が続いた。
私の目線の先には、いつもの倉庫。
ここを曲がれば、見えなくなる。
「 Aさん？ 」
「 ん？ 」
「 ぼーっとしてたから、大丈夫？ 」
角を曲がって、倉庫は見えなくなった。
「 ああ、うん、ごめんなさい 」
「 Aさんって誰ともいないから、話しにくい人だと思ってたけど、全然そんなことないね 」
「 … 」
「 Aさん、照れてるの、可愛い 」
むず痒くて、逃げ出したくなった。
木岡くんが嫌なわけじゃない。
しかも今まで話したこともなかった人に、
いきなりこんなことを言われるのは、心臓に悪い。
「 Aさん、僕と付き合ってくれませんか 」
急に立ち止まって夕日に照らされた木岡くんが言う。
これは、告白か。
「 え、あ、…ごめんなさい 」
「 …そっか、じゃあまた、週明けに 」
そう言って、木岡くんは私がこの後歩く道を、歩いていった。
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作者名：a.
| 作成日時：2020年10月17日 22時
