【雨音】 (ページ11)

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母親は死んでしまったが、父親がいてくれたら寂しくなんてないなんて子供ながらに思っていた。

あの頃の自分は本当に馬鹿だ。

初めて父親の胸内を知り、殴られたのは、
父親と二人きりの生活が始まって2週間程経ったときだ。確か私は、小学1年くらいだっただろうか。

小学校から家に帰れば、まだ夕方なのにべろべろに酒に酔った父親がいた。

テーブルには缶ビールが既に5、6本空になっている。

今思えば、これが私の最後の

「だだいまー！」

だった。

父親は今までに見た事ないようなさけずんだ目をこちらに向けてきた。

あの時感じた「危機感」「恐怖」は今でもはっきりと覚えている。

父「父さんな…会社辞めてきた。」

イラつきながら私にそう告げた。

「な、なんで？」

できるだけ平然を装い聞き返した。

父「お前の…お前のせいだ……！」

父「お前が母さんを殺したから、俺はあいつが居ないと駄目なんだ…あいつが居なくなってから、会社でも失敗ばかり、任された仕事もこなせなくなった…もうどうでも良くなったんだよ！！！」

父親が私に怒りをぶちまけた。

既に優しかった父親の姿は消えていた。