尖る瞳眠る声 (ページ4)

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結局拓実くんに付いてきたのは俺だけだった。他のメンバーも来たがってはいたけどスケジュールが合わず。俺たちが通されたのは2階の席。まだ開演まで時間はあるのに1階フロアはもう人がパンパンで、2階まで伝わる熱気に圧倒される。2階は関係者のみって聞いてたけど1階ほどではないにしろしっかり人数がいて、ちょっと緊張感のある感じ。

「なんか、すごいっすね」
「やっぱ俺らのライブとは雰囲気違うよな」

ワールドツアーで似たような箱でライブしたけどお客さんの層や密度が違えば全く別の空間になるんやなって発見。俺たちがこの箱でライブしても、きっとこの熱気と緊張感は出せんと思う。

ライブを見に行くことが決まってからは毎日曲を聴くようになった。どの曲も色が違うから新鮮な気持ちで聞けるし何よりも歌詞が刺さった。自分も作詞をするからこそ、言葉選びのセンスやボキャブラリーの多さに感服して拓実くんが褒めていただけあるな、と思った。曲を作ったことがある人はこのバンドの良さがすぐ分かるクオリティの高さ。

景瑚くんが顔を見たいと言ってたのも今なら理解できる。どういう人たちがあの曲を作っていてどういう人があの詞を書いたのか、俺も見てみたくなったから。…景瑚くんはちょっと下心ありそうやけど。

俺のお気に入りの曲やってくれるかな、なんてソワソワして。ライブ前のファンの子の気持ちってこんなんなんやろかと想像しているうちに照明が落ち、ステージだけが照らされた。

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