尖る瞳眠る声 (ページ12)

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「大平さんが私に話したいことあるって」
「え？」
「拓実くんが、……違いました？」

…ほんまに、ほんっっまに許さんあの人。そもそもその拓実くん呼びはなんなん、いつの間にそんなことになってるん。とりあえず思考をフル回転させてみるけどお酒が回ってるのに加えて普段からボケるのも苦手やからたいして面白い返事も思い浮かばず。

「や、話したいことっていうか…」
「？」
「ずっと探してたんすけど、どこいました？」

真っ向勝負やろもう、こんなチャンス逃せへんし。そんなこと？みたいな顔して答え始める彼女も少し酔ってるのか楽屋で会ったときよりもさらに柔らかい雰囲気を纏っていて。やっぱ可愛いなあ、なんて呑気に考える。

彼女はここからは見えない隣のフロアにいたらしく、そこに他の人に連れられた拓実くんが来て今に至るらしい。

「大平さんも作詞作曲してるって聞きました」
「あ、はい、一応」
「曲、聞きたいです！」

そう言って見つめてくる彼女の瞳は純粋そのもので吸い込まれそうになる。音楽が好き、音楽が聴きたい、という気持ちがひしひしと伝わってきて心臓がキュッとする。こういう感じで近寄ってくる女の子なんていっぱい見てきたけど、彼女がそういうのじゃないのは分かるから悔しい反面、俺自身を知ろうとしてくれる彼女への好意がより一層強くなった。

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