Begin...【changmin】第７章-Part４- (ページ9)

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第809話彼の形。ページ9

―――― バタンッ

チャンミンが玄関のドアを閉める音で
パッと目を開ける。

ベッドの中、隣には誰もいない。
いつもの朝と同じ、しん、と静かな部屋。

私は今、さっきまでここに
チャンミンがいたこと自体が
夢だったのではないかと感じた。

だけど…髪を撫でる優しい大きな手と
"愛してます"の声とキスの感触が残る。

こんなに愛しさと寂しさを残して
どこへ行ってしまったの？

私は寝室を飛び出して
チャンミンの背中を追いかけた。

リビングにもいない。
玄関にもいないし大きな靴もない。

A「チャミ…(泣)」

昨日みたいに、呼べば来てくれるの？
私のそばで笑っててくれるの？

私は玄関のドアにおでこをくっつけて
何度もチャンミンの名前を呼んで泣いた。

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A「……」

本当に、夢だったのではないかと思う。

鏡に映った目を赤く腫らした私の顔は
一緒にいれないチャンミンを想って
もう何度も見てきた顔だったから。

昨日の幸せな時間はいい夢？
今の喪失感は悪い夢？

いい夢なら覚めないように、と
全く眠ることができなかった私は

また今日も泣き疲れて眠るのかと
落ち込んで玄関からリビングに戻った。

A「……」

テーブルに置いてあったお弁当箱がない。

チャンミンに朝食に食べてもらうために
作ったんだけど、持っていったのかな？

ぐるっと周りを見渡すと
キッチンに洗い終わって
置いてあるのを見つけた。

A「……」

お弁当箱を手に取ると
その下からはメモ書きが。

ハングルで書かれてるけど
毎日何時間も勉強したし
簡単な単語だから読める。

A「"おいしかった"…"ありがとう"…」

そして"僕の気持ち"と書いてあり
矢印で差してある場所には

"With All My Heart"
と、書かれていた。

A「…なんで(泣)」

…普通に考えれば
"離れていても想っている"という
切ないラブソング。

だけど昨日感じたように
私とチャンミンの姿を重ねてしまい
私にとっては失恋ソングになっていた。

"失恋したわけじゃない"と
考える事もできるのに…

一緒にいれて幸せだった分
ここにチャンミンがいない事に
その倍寂しさと喪失感を感じる。

ただ、この短いメッセージだけが
彼が確かにいたことを
形として切なく残していた。