ピアス (ページ4)

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次の日、教室に入ると

クラス中が騒然としていた。

みんなの視線の先にあったのは、

髪が黒く染められた、転入生の姿だった。

廉「あいつ、どうしたんだよ急に」

『…んー、やっぱ怒られたのかな？』

廉「せやな」

黒髪に変身した彼は、

周囲の目線に気づいていないのか

誰のことも気にせず音楽を聴いていた。

＿ねぇ、黒髪かっこよくない？

＿金髪も良かったけど、黒はセクシー！

女子たちは、チラチラ横目で彼を見ては

小声で騒ぎ立てているようだった。

廉「…俺、負けてる？」

『…うん』

廉「お、おい！正直やな！」

焦っている廉を置いて

なるべく平常を装いながら席に着くと

彼がイヤホンを外すのが視界に入った。

紫耀「A。学校、案内してくれない？」

スマホの画面から

私へと移った彼の視線。

その瞳は真っ直ぐに私の目を捉える。

『…え、あ、私！？』

紫耀「何でも聞いていいって言ってたけど？」

突然のことに驚きつつも

昨日自分の言ったことを思い出すと

どうしても断ることなんて出来なかった。

『私で良ければ…』

紫耀「じゃあ決まり。放課後よろしく」

『あ、うん…』

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「席に着け～、挨拶するぞ」

ちょうどタイミングよく先生が入って来て

朝のホームルームが始まった。

それでもまだ胸のドキドキは収まらず

しかし、それが何のドキドキかは

よくわからないままだった。

紫耀「ねぇ、ここに書いてある辞書って

電子辞書でもおっけー？」

先生にバレないくらいの小さい声で尋ねてきた紫耀の

「辞書」の部分をさした指には

大きくて綺麗なリングがはめられていた。

『あ、大丈夫だよ。電子でも』

紫耀「そっか。サンキュ」

『この学校、校則厳しいから気をつけて！』

紫耀「知ってるよ。この髪もさ」

惜しいように触られた髪は、艶のある黒で

セクシーだ、なんて言ってた友達の言葉を

理解したような気がした。

紫耀「髪、黒くしねぇとダメだって。

最初は辞めてやろうと思ったけどさ」

『う、うん』

紫耀「なぜか嫌だって思う自分がいてさ」

特に良いところもない学校だけど

そう思ってくれたのが嬉しくて

ありがとうと言ってみた。

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