◆ ページ28
小さな時、父や母に教えこまれた。
殺す相手に感情を持ってはいけない。少しでも気持ちを出せば殺しなんて出来なくなると。
そんな事をずっと言われながら技術を教えこまれたんだから、大人になっても本気で誰かに感情移入することはなかった。
なのに佐久間さんのことを考えたら、もっともっと彼を知りたいと思って、一緒に居ると楽しくて彼が笑えば私も笑った。
心の底から楽しいと言えた。
死んでほしくない。
もし私が彼を殺さなくても、次はお兄が彼を狙う。
死んでほしくない私が彼に出来ることは一つしかない。
ピンポーン、とチャイムを鳴らすと暫くしてから濡れた髪のまま上裸姿の佐久間さん、いやエスって呼ぶべきなのかな。
＿＿彼が出て来て、下からゆっくりと私を見上げた。
「どうして此処に居んの？ ……て、そういうことだよな。全部知ってんだろ俺のこと」
ふ、と片方の口角を上げて不敵な笑みを浮かべる。その瞳は決して笑っていなくて、ゾクッと鳥肌が立った。
「私の話を聞いて、お願い」
此処で仕掛けてくることはきっとない。
自分の生活圏内で事件なんて起こしたら暮らせなくなるだろうから、だから敢えて此方からやって来たんだもん。
そして予想通り佐久間さんは身体を横に向けて部屋の中へ入れてくれた。
その時、私の背中にはじっとりと彼の視線が絡みついて暑い季節なのに背中に汗が伝う。
此処で隙を見せたら危ないかもしれない。
でも私は貴方の敵じゃないと伝えたくて此処に来たんだ。
「なんか飲む？ 佐久間さんお茶苦手だからジュースかスポドリしかないけど」
「じゃあ、水道水で」
「……やっぱり君変わってんね」
リビングに一人残されて、戻ってきた佐久間さんは水の入ったグラスを「はい」と置いた。
そのまま目の前にあるデスクチェアに腰掛けて、私を品定めするように指を絡めて見つめてくる。
「それで俺になんの話があるの？」
「……私、殺し屋なの」
「………」
「うちは家系がその筋で、私の意思に関係なく子供の頃からこの世界に居た。でも本当はこんな仕事はしたくない」
「ふぅん」
緊張で喉が渇くけど、指一本動かせない。佐久間さんの視線がまるで縄のようにギューって身体に巻きついてるみたいだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 454人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきんこ(プロフ) - 悠砂さん» コメントありがとうございます！最後まで読んでもらえて嬉しいですし、続きを読みたいと思ってもらえたことも嬉しいです！続きを書くとしたら、今回のようなスピードでは書けないかもですが書けるように頑張りたいと思います😌ありがとうございました！ (2022年8月8日 22時) (
レス) id: 81b6eaa049 (このIDを非表示/違反報告)
悠砂 - こんばんは。最後まで読ませていただき、続きが読みたいと思いました。ベッターでも占ツクでもいいので、続きが読めると嬉しいです！他の作品もあるので、大変かとは思いますが、ゆきんこさんの作品はとても好きなので、楽しみにしています。 (2022年8月7日 22時) (レス) @page44 id: cf5d43c431 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - みぃ。さん» みぃ。さーん！気にしてくれてる方いたー！って喜びの舞を踊ってます私😂 誰も気にしてないかぁって思ってたんですが、この伏線大好き女の私なので何かあるって思ってもらえないかなぁとか(笑) やる気出ました！頑張ります！！ (2022年8月6日 23時) (レス) id: 81b6eaa049 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - あきさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます😊 その言葉励みに頑張っております！！ (2022年8月6日 23時) (レス) id: 81b6eaa049 (このIDを非表示/違反報告)
みぃ。(プロフ) - ゆきんこさーん！途中でコメント入れるのはお久なのですが、中編まで公開、お疲れ様です！いや、私気になってんですよ、お兄。←コレが言いたくてコメントしました🤣後編も楽しみにしてます！ (2022年8月6日 19時) (レス) id: fb4296a570 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆきんこ
| 作成日時：2022年8月4日 7時
