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物理。廿 ページ22

手が離れてからもう一週間たった。不死川さんとはあれから会ってない。
それでも、会わない時間が長い程彼のことをずっと考えてしまう。
鬼を斬りまくる日常に戻っても、浮かぶのは不死川さんばっかり。


『あそこの甘味処、わらび餅が美味しいって蜜璃ちゃんが言ってたな』


甘味処に寄り、わらび餅を食べていれば、二つの影が出来たので顔を上げる。


「ねぇねぇお姉ちゃん、可愛いね。今ひとり?」

「一緒に来ない?面白いもの見せてあげるからさあ」

『結構です』


眉を顰めながらそう言って最後のわらび餅を食べ、お代を払って席を立つ。
しつこいことに、男二人はまだ声をかけてきて、挙句の果てには私の右手を掴んだ。


『……触らないでください』

「つれないなあ、無理矢理連れてくことだって出来るんだよ?」


自分でも思ってないくらいの冷たい声が出た。
なんだか許せなかった。不死川さんとずっと繋がってた右手を、他の奴が掴んでる。
あの、努力の手じゃない。骨張って、大きくて、硬い手じゃない。
それが嫌でしょうがなかった。


そうやって手を繋ぎたいのは、不死川さんだけなのに。


「はァ、威勢のいいこったァ…出来るモンならやってみろや」


あの、大好きな声が聞こえた。
私を掴んでいる奴の手をガッと外して、私を引き寄せる。
不死川さんが私の右手に手を滑り込ませる。


「Aと手ェ繋いでいいのはこれからも俺だけなんだよォ。分かったら散れ」


『し、不死川さん』


悔しそうな顔をした奴らはさっさと逃げていった。
安心する彼の香りと温もりが肌に伝わる。


「…骨のねェ奴らだなァ…」


そう呆れている不死川さんに、私は抱きついた。
がばっ!と効果音がつきそうなくらいの勢いで、自分より背が高くて逞しいその身体に抱きついた。


『…しなずがわさん』

「何だよォ…おい、泣いてんのか?よし、あいつら今から絞める」


物騒な単語が聞こえたけど、気にしないで私は思いの丈を吐き出しまくった。


『…っ不死川さん大好きです…!私これからも手、繋ぐの不死川さんじゃなきゃ嫌です…!』


そう言えば、彼は私の大好きなあの穏やかな顔で私の頭を撫でる。


「当たり前だ。つか俺の方が好きなんだよ、嫌っつっても絶対離さねェ」


繋いだ手を握りしめる。不死川さんがそう言ってくれるのが夢にように嬉しかった。
……これからも、ずっと、不死川さんといっしょ。






不死川さんといっしょ(物理) 終

後日。《無一郎の初恋》→←物理。拾玖



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ナイトウルフ(プロフ) - 最後、、、!一気に読んじゃいました(笑)さねみんイケメン…この話が現実になればいいのにッッッ 素敵な作品をありがとうございます!! (2022年2月13日 1時) (レス) @page28 id: 1bd66c2c15 (このIDを非表示/違反報告)
aya(プロフ) - 夢中になって読みました! 他の柱の物理も読みたいですーーー! (2020年12月3日 0時) (レス) id: 1c30a1e22f (このIDを非表示/違反報告)
闇ちょこ(プロフ) - 番外編のおばみつちゅき(( (2020年7月31日 14時) (レス) id: e0b0a3b941 (このIDを非表示/違反報告)
銀時 - 凄い面白かった!天元が爆笑してるの想像したらめっちゃ笑えてきた! (2020年4月24日 3時) (レス) id: 6c694a1b22 (このIDを非表示/違反報告)
瀬田 - 幸せです (2020年3月24日 22時) (レス) id: 2c549b1da3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:空風まりも | 作成日時:2019年12月14日 20時

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