物理。拾伍 ページ17
『ふぅ、上手くいきました。不死川さん、息ぴったり合わせてくれてありがとうございます』
そう言うと、不死川さんは何かを呟いた。
でも、声が小さすぎて全くもって聞こえなかった。
『どうしました?』
そう聞けば、ギッと真正面から私を睨んだ後、ずいずいと私を引っ張って元来た道を戻っていく。
…すごい、怒ってる。
視線の先に、外を歩くしのぶちゃんがいた。不死川さんは私を引っ張って無言で近づいていく。
「胡蝶」
「あら?お二人とも帰られたんじゃ_そういうことですか。ただ持ち合わせの薬では効きそうもないので蝶屋敷までお願いします」
この空気の中で、にっこりと安心させるように笑ってくれるしのぶちゃんが救いだった。
「はい、これで痛みは引くと思いますよ。遅いので今日は泊まっていってください」
『ありがとう、しのぶちゃん』
そう言えば、いえいえと言ってにこりと微笑む。
相変わらず隣の不死川さんからは怒った気配がして少し肩身がせまい。私何かしたっけ?
「不死川さん、思ったことは言ったほうがいいですよ。あなたらしくありませんし、Aさんには言わなきゃ通じません。私は失礼するのでごゆっくり」
そう言うとしのぶちゃんはぴしゃりと扉を閉めて出て行ってしまった。
今日、何度目かの沈黙。部屋に二人でぽつんと立っている。
少しすると、不死川さんが口を開いた。
「…何も言わずに隙作れだ走れだ言いやがったくせに、自分は怪我しやがったな」
『…ごめんなさい、でも』
「でもじゃねェ」
そう言うと不死川さんは右手で俯く私の顔を上に向かせる。
嫌でも怒ってる不死川さんと目が合って怯んでしまう。
「テメェは使い慣れない左手で、失敗したらどうするのかも考えずに勝手にやりやがった」
「信じろっつったから合わせたがテメェが無茶して怪我すんなら別だ」
私は唾をごくり、と飲んで口を開く。
『で、でも無茶してませんそれが一番いいと思って…』
そう言うと、不死川さんの瞳が一層怒りで細まった。
瞬間、壁に押し付けられる。手が片方塞がってて、片手まだ麻痺してる状態で抵抗できるわけもなくて。
「黙れ」
凄く低い声にビクリと肩を震わせる。
これまでの五日間見たことない不死川さんの怒りの表情と声に、感じるのは恐怖だった。
空気に耐えきれずにつぅ、と涙が頬を伝う。
それを見た不死川さんは、急に悲しそうな目をした。
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ナイトウルフ(プロフ) - 最後、、、!一気に読んじゃいました(笑)さねみんイケメン…この話が現実になればいいのにッッッ 素敵な作品をありがとうございます!! (2022年2月13日 1時) (レス) @page28 id: 1bd66c2c15 (このIDを非表示/違反報告)
aya(プロフ) - 夢中になって読みました! 他の柱の物理も読みたいですーーー! (2020年12月3日 0時) (レス) id: 1c30a1e22f (このIDを非表示/違反報告)
闇ちょこ(プロフ) - 番外編のおばみつちゅき(( (2020年7月31日 14時) (レス) id: e0b0a3b941 (このIDを非表示/違反報告)
銀時 - 凄い面白かった!天元が爆笑してるの想像したらめっちゃ笑えてきた! (2020年4月24日 3時) (レス) id: 6c694a1b22 (このIDを非表示/違反報告)
瀬田 - 幸せです (2020年3月24日 22時) (レス) id: 2c549b1da3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:空風まりも | 作成日時:2019年12月14日 20時