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「トラウマ?」
「あんたが言ったんだろ。」
ヒソカの右胸でルビーが蠢く。己の身体を貫かんとするやんちゃなそのルビーは、バンジーガムが成長を妨げ窮屈に仕舞われている。
「『今更逃げ出すのはナンセンス』ってな。」
再び少女の左胸がパキンと固まる。ヒソカが転がした串はただの血液に変わり果て、右胸の蠢きも止まった。
「眼球は人間の急所だ。急所を狙わずしてあんたを倒せるなんて夢のまた夢。」
「痛いところを突いてくよ。…夢で終わらせてたまるか。」
「カッコイイことを言うじゃないか…♡」
髪を乱し、真っ赤に染まった右目を少女に向け、ヒソカは眉を釣りあげ笑う。その姿は空想上の死神よりずっとおそろしく、綺麗だ。
「さぁ、来なよ。」
*
(私が強くなるには、どうしたらいいんだろう。)
少女は自室で、先日のジョック=ジョー戦で受けた指の傷を確認する。
能力を発動すればパキンと固まり、指輪のようにその指を囲う。血液を更に消費して、やがて指輪は歪なフィンガーアーマーの形になった。
打撃に斬撃を加え、中距離で相手にダメージを与える。それが自身の主力とする、
少女は元々手先の器用な人間だ。大抵の武器は即興でも"そこそこ"使える。
(…そこそこ、じゃ、勝てない。)
ルビーはあくまでサブウェポン。どん詰まりだ。
(…私の得意…)
殴る、蹴る。シンプルなのがやはり一番得意だ。けれど体格故、限界がある。
(限界突破、念でのバフ…)
強化系だとわかった以上、それを極めるのがきっと強い。だけど、それを始めるには寄り道が多すぎた。
(何か、何か無いか…)
「…」
「っいて!」
少女は仰向けになって、何も考えず目元に手を当ててしまう。ルビーが瞼を掠め、小さな傷を作った。
ビリリと痛む瞼から涙のように流れる血。呆れた様に能力を解除し、少女は起き上がる事すらしなくなった。
(イルミを)
(イルミを殺した時、)
思い出したくない記憶の蓋を少しずつ、開ける。
(私は、躊躇いが無かった。)
今瞼に感じる温度なんて、彼が受けたものに比べればカスみたいなものだ。
眼を貫かれた瞬間、傷口が一気に熱くなっただろう。
死にゆく瞬間、全身が酷く凍えただろう。
(…違う。今は、そういうのじゃない。)
考えるべきは、もっと他にある。
(…そう。)
(私はあの時、イルミを殺した時、)
(とても、
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アップルパイ - あのめちゃくちゃ大好きな作品です、オリ主の絶対とか本当に大好きで最高です!何回も繰り返し読みました!ヒソカとかの絡みとかが面白くて大好きです!更新楽しみに待ってます (11月23日 7時) (レス) @page35 id: 0177fc07a0 (このIDを非表示/違反報告)
アーモンドパイ - 話好み過ぎて無限に読めます😍ハンター試験〜闘技場の全部が最高だったので、かぴばらさんの描く夢主ちゃんのいるヨークシン編やキメラアント編メチャメチャ楽しみにしてます。素敵な作品に感謝😚 (2022年11月24日 1時) (レス) id: 413d74b396 (このIDを非表示/違反報告)
かぴばら2(プロフ) - そすさん» 貴方様のコメントに投げ銭したいです!💰師匠は本能的に何となくでゴックンしてたら嬉しいな〜フヒッと思って書きました😊吐き出した妄想全部理解してくださると照れるけどやっぱ嬉しいですね😚コメントありがとうございました! (2022年10月10日 22時) (レス) id: a02d4950c9 (このIDを非表示/違反報告)
そす(プロフ) - 番外編で夢主ちゃんのタイプが「自分より強くて常識外れで短髪でオシャレ(?) で完璧な肉体美の持ち主で歳上で束縛しなくて切れ長目で表情豊かで前世に固執しない人」で師匠が全部当て嵌まってるのがもう……一方その頃の毎度ぶっ飛んだ師匠の親心も好きです😇 (2022年10月8日 14時) (レス) @page35 id: 4547e6e600 (このIDを非表示/違反報告)
かぴばら2(プロフ) - あんころさん» コメントありがとうございます🙇♀️私も夢主ちゃんが可愛くて仕方ありません🥰こうして夢主ちゃんが好きだと言ってくれるのホントに嬉しいです💗💗ゆっくりゆっくり書き溜めていってるので是非!楽しみにしててください! (2022年7月21日 20時) (レス) id: a02d4950c9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かぴばら | 作成日時:2021年8月30日 22時