検索窓
今日:6 hit、昨日:43 hit、合計:98,575 hit

48* ページ50

「さっき旦那言いましたよね?時間がないって」


目の前のAちゃんは、先ほど沖田くんの着物の裾を掴んでいた時とは違い、落ち着いていた。


「・・・そうです。時間がないんです」


ゆっくりと起き上がるAちゃん。


銀時「おい、倒れたばっかだろ?」


俺は横になるよう話すも、Aちゃんはそんな俺に笑いかけた。


「さっきみたいに無理はしませんよ。わかってます。自分の身体です」


少し溜めると取り乱す事なく言い切った。


「・・・明日にでも死ぬかもしれないんです、私」


銀時「Aちゃん・・」


普通なら取り乱すのに、落ち着いていて怖いくらいだ。


「フフ、なんで黙るんですか?」


銀時「わ、悪い」


「謝らないでください。でも・・・困っちゃったなー」


そう言って自身の白い手の中にある簪を見つめるAちゃん。


銀時「そりゃ、なんなんだよ」


「・・5年前、総悟に好きと伝えて、初めてデートに行った日に総悟がくれたモノです」
(お忘れの方はPart 12を見てください)


Aちゃんはソレを握りしめた。


「困りましたよ、旦那・・」


銀時「何が」


「・・・長くないからこそ・・総悟に隣にいてほしくなかった」


簪を握る拳に雫が落ちた。


「これ以上・・・私の生きたい、死にたくないっていうワガママに・・・付き合わせたくなかった・・」


ポタリポタリと雫が落ち、白い布団を濡らす。


「一人にしないって・・約束した・・・のに・・総悟に私の・・死ぬとこ・・見せたく・・・ないんです」


銀時「・・・」


「ミツバ姉に続いて・・・私の、死ぬとこ・・見せたく・・・ないんです」


目の前で拳を握り涙を流すAちゃんに、何も言えなかった。


「だからアンナ事言っちゃいました・・。バカですよね・・」


Aちゃんの気持ちはわからなくはない。
自身の寿命を知っているからこそ、迷惑をかけたくないという気持ち。
沖田くんのお姉さんが亡くなった時の事を、その時の沖田くんを知っているからこそ、見せたくないって気持ち。


銀時「・・ホント、バカだよ。相変わらず素直じゃねぇ」


だからこそホントの気持ちも見えてくる。


銀時「本当は・・・傍にいて欲しいくせによ」


「ホント・・バカですよねっ・・」


俺はAちゃんの手にある簪に落ちる雫を気にせず、隣で真っ暗な外を眺めながら、Aちゃんの真っ白な髪を撫でた。

この小説の続きへ→←47*



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (57 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
239人がお気に入り
設定タグ:天人さんです , 銀魂 , 完結編
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ユズ風呂(プロフ) - 完結編でぶっちゃけ夢主ちゃんの格好何に似せたんですか? (2019年4月28日 16時) (レス) id: 8ff75eaee8 (このIDを非表示/違反報告)
沖田いずみ(プロフ) - 紫蘭さん» リクくれて始まりも遅かったのにそう言われて頑張れます!!涙腺崩壊しちゃってください笑笑 (2017年12月3日 21時) (レス) id: 028374920b (このIDを非表示/違反報告)
沖田いずみ(プロフ) - りんごあめさん» そう言ってもらえると頑張れます!!長引いてますがよろしくお願いします!! (2017年12月3日 21時) (レス) id: 028374920b (このIDを非表示/違反報告)
紫蘭(プロフ) - 逆にもっと長引いてほしいです。切実に…笑 毎日毎日涙腺と格闘してます…もう悲しくて悲しくて…。 引き続き頑張って下さい!! (2017年12月2日 23時) (レス) id: 684ce788b1 (このIDを非表示/違反報告)
りんごあめ(プロフ) - むっちゃ好きです!むしろ長引くほどいずみさんの小説読めるので嬉しいです!1日の楽しみになってます!応援してます!! (2017年12月2日 23時) (レス) id: 7b8fac289e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:沖田いずみ | 作成日時:2017年11月5日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。